第57回 歓迎すべからざる非正規雇用者の減少

このところ失業の増大を示す統計数値が相次いで発表されています。
 
厚生労働省「一般職業紹介状況」によれば、2009年4月の有効求人倍率は0.44(前年同月0.89)でした。正社員にかぎれば0.27(前年同月0.54の半分)で、1人の求人に4人の求職者が殺到するともいえる狭き門です。
 
総務省「労働力調査」の2009年4月調査の結果によれば、完全失業者は346万人で、前年同月の275万人(4.1%)に比べ、71万人増加しています。完全失業率は5.0%で、前年同月の4.0%から1%高まり、季節調整値としては2003年11月以来、5年5カ月ぶりに5%台を記録しました。
 
いまひとつ注目すべきことに、「労働力調査」の2009年1〜3月の詳細集計結果でみると、下の表に示したように、昨年10〜12月に比べて、今年1〜3月は、非正規雇用者が1796万人から1699万人に、97万人減っています。1年前でみると一昨年10〜12月が1738万人、昨年1〜3月が1737万人で、ほとんど同数でしたから、昨年から今年にかけての変化は特別に異常であることがわかります。
 
表 雇用形態別、性別就業者数の変化
 
 
役員を除く雇用者
正規
雇用者
非正規雇用者
パート、アルバイト
派遣
労働者
契約社員、
嘱託
その他
2008
10〜12月平均
5185
3390
1796
1153
146
340
157

2009
1〜 3月平均
5086
3386
1699
1132
116
318
133
前期比
-99
-4
-97
-21
-30
-22
-24
2008
10〜12月平均
2928
2340
588
255
55
196
82
性 
2009
1〜 3月平均
2875
2362
512
245
38
167
62
前期比
-53
22
-76
-10
-17
-29
-20
2008
10〜12月平均
2257
1050
1207
898
91
143
75
性 
2009
1〜 3月平均
2211
1024
1187
887
78
151
71
前期比
-46
-26
-20
-11
-13
8
-4
(出所)「労働力調査」詳細集計
 
正規雇用者は男性が22万人増加し、女性が26万人減少し、差し引き4万人の減少になっています。非正規雇用者の減少は男性が76万人、女性が20万人で、男性の減少の大きさが目につきます。この非正規雇用者の減少は、昨秋来の恐慌による突然の乱暴な首切り・雇い止めの結果にほかなりません。
 
それにしてもこの未曾有の恐慌のなかで、男性の正規雇用者が増えているのはどう考えたらよいのでしょうか。この増加はアルバイトや期間工や派遣などの男性非正社員の一部の正社員化が進んでいることを意味するのでしょうか、それとも、男性正社員のなかにたいして非正社員と処遇が変わらない「名ばかり正社員」が増えていることを意味するのでしょうか。おそらく後の意味ではないかと思います。
 
いずれにせよ、上の表が物語っているのは、正規と非正規を合わせると、就業者の減少は、男性では53万人、女性では46万人であり、労働力の性別構成比からみれば、男女がほぼ等しく失業させられているということです。

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