昨日、TBSの「ひるおび!」(11:00〜2:00)の担当ディレクターから電話取材がありました。今日放送された当該番組は所用で観ていませんが、取材でお聞きしたところでは、最近、水曜日を「ノー残業デー」とする企業が増えていることに関連して、通販業界などでは水曜日の売上げが伸びており、それが「ビッグウエンズデー」と呼ばれているようです。
通販などの水曜日の売上げが増えた現象を誰が何時「ビッグウエンズデー」と言い始めたかは知りません。しかし、元をたどれば、この言葉は、1960年代にカルフォルニアのサーフィンの名所で水曜日に大きな波が来ることを意味するものとして使われていたようです。
「ノー残業デー」という言葉は、企業や労働組合ではずいぶん前から使われていたと考えられますが、労働省(現厚労省)が言い出したのは、1991年に公表された「時間外労働削減要綱」がおそらく最初です。この要綱では「所定外労働時間を、当面(今後3年程度の間)、毎年10%ずつ削減する」こととあわせて、「サービス残業はなくす」ことが謳われていました。
それからすでに20年近くが経ちましたが、ノー残業デーの導入企業や適用労働者が大きく増えたという証拠はありません。2008年秋以降の不況の影響を別とすれば、正社員の残業が減って労働時間が短くなったという事実もありません。2008年5月23日〜2008年6月2日に行われたYahoo!意識調査によると、ノー残業デーについて「制度もあるし、実際に浸透している」と答えたのは50643票中の7614票で、わずか16%にすぎません。
とすれば、通販販売の売上げが水曜日に増えたのはノー残業デーの影響によるとは必ずしも言えないと思います。それにそもそもネットショッピングやテレショッピングなどの水曜日の売上げが伸びていると言っても、それがどの程度確かなことなのかはまだわかっていません。
かといって消費に変化がないわけではありません。2008年秋からの不況の影響で人々の消費行動が変化していることは確かです。賃金が下がり、所得が減少しているもとで、消費支出を抑える傾向が強まるとともに、少しでも安いのものを買い求める傾向が強まっています。こうした傾向が人々のショッピングの経路選択や、曜日別の買い物行動にどのように影響しているかをみることなしに、ノー残業デーの影響だけを取り上げるのは一面的です。
「残業も 毎日続けば 定時です」というサラリーマン川柳があります。特定曜日に定時退社日(ノー残業デー)を設定しても、持ち帰り仕事や他の曜日の残業が増えるなら、労働時間の短縮にはなりません。この点で現実は、次のサラリーマン川柳にいう状態に近いのではないでしょうか。
「ノー残業 おかげで明日は 超残業」