第235回 安倍政権のいう国家戦略特区は国家公認のブラック企業特区です。

当欄で前(第230回)に述べた政府の国家戦略構想が風雲急を告げています。

今日の朝日新聞は、〈「解雇特区」政府が検討〉という見出しで、安倍政権が秋の臨時国会に出す国家戦略特区関連法案に、労働時間を規制せず、給与によっては残業代をゼロにすることも認める特例措置を盛り込もうとしていると伝えています。その記事にはありませんが、特区では最低賃金制の適用を除外するという案も出ています。

これは政労使の三者で構成される厚生労働省の労働政策審議会で検討されたものではありません。労働基準法の根幹にかかわる制度改革でありながら厚生労働委員会にもかけられずに強行されてしまう恐れもあります。

これを検討したのは、第2次安倍内閣の「日本経済再生本部」の下に置かれた「産業競争力会議」の、そのまた下に設けられた「国家戦略特区ワーキンググループ」です。ここには労働者代表は1人もいません。経過から見て、ここに貫かれているのは財界の利益とそれに追随する経済産業省の省益です。

労働基準法は労働者が人たるに値する生活をするために必要な労働条件の最低基準を定めた法律です。しかし、国家戦略特区構想は、労働契約や労働時間や賃金などの労働条件について労基法の適用を外そうというのですから、ブラック企業さながらの労基法無法地帯をつくろうとするものにほかなりません。このところ問題になっているブラック企業との関連で言えば、現存するブラック企業は、どこかやましいところのある闇の存在ですが、特区に誘致された企業は誰はばかることなく公然と労基法を無視してよいということです。

そもそも経済特区は途上国や新興国が先進工業諸国の企業を誘致するために創設されてきました。それは企業活動のグローバル化を進める先進国にとっては渡りに船でした。ところが、いま安倍内閣が行おうとしているのは、新興国を含む海外企業の日本への誘致です。そのために労働条件を途上国や新興国レベルに引き下げて、「医療特区」や「教育特区」や「インフラ特区」を「雇用特区」と抱き合わせにして、海外企業に特別の便宜を提供しようというのです。

すでに大阪府と大阪市は共同で、国が創設する国家戦略特区へ医療、環境、インフラなどの分野で計27事業を提案しています。日本維新の会の橋下共同代表は、昨年12月の総選挙の前に、政権公約の一つとして最低賃金制の廃止を打ち出しました。世論の強い反発にあって、「市場メカニズムを重視した最低賃金制度への改革」と言い換えました。しかし、実際は政府が賃金の最低限を規制するのでなく、賃金は労働市場の相場に任せるのがよいとされている点で、最賃撤廃論とかわりません。この一事をもってしても、大阪府市の特区誘致が労基法無法企業の誘致になることは目に見えています。

大阪でも他府県でも国家公認のブラック企業特区の創設を許してはなりません。これが実行されると、安倍首相と自民党の言う「世界で一番企業が活動しやすい国」づくりが進みます。その結果は、日本が「世界で指折りの労働者が生きづらい国」になるということです。

この記事を書いた人