話題の「桜を見る会」をめぐる国会質問を見て(1)
「桜を見る会」をめぐる国会質問
退職して自宅にいることが増え、テレビを見る機会が増えました。そして、11月8日、NHKの国会中継を見ました。参議院予算委員会で共産党の田村智子議員の質問です。
その田村議員の質問を、30分間、引き込まれるように見入りました。安倍総理の「桜を見る会」をめぐって、徹底した取材と調査を基にして事実を次々に積み重ねて、総理自身や内閣官房官僚の逃げの答弁に、これでもかこれでもかと次々に鋭い質問をぶつけていく田村議員。論理的な追及にたじたじとなる安倍総理。30分があっという間でした。ドラマのような迫力でした。他党議員も質問の終わりと同時に拍手をしていましたが、私もテレビに向かって思わず拍手しました。田村議員の質問には、きっと時間をかけて多くの人が有無を言わせぬだけの事実を調べ上げたone teamの努力があるのだと思いました。
田村質問について、Youtubeでは10万回以上再生されています( https://www.youtube.com/watch?v=FqG_eybQ_ZE )。また、全文文字起こしをしたサイトも現れています(https://naomikubota.tokyo/blog/cherry_bribe?fbclid=IwAR0S8WKW6NX-yea2N5sT-cF4wpIGIe_kDjxmI9gA1tHi_LzL_QqF7ogyZ4w)。そして、野党と共産党が取り上げるなかで「桜を見る会」が大きな政治問題に浮上してきました。当初、ほとんど報道しなかったマスコミも変わりました。本日(12日)朝、テレビ(民放)のほとんどのチャンネルが「桜を見る会」を取り上げて詳しく報道するようになり、NHKもニュースで取り上げました。
ただ、私が思ったのは、田村議員が取り上げた事実は、本来、マスコミが先に報道していてもおかしくないことです。国会で取り上げられてから報道するという、マスコミの後追い姿勢に釈然としないものを感じています。もちろん、後からでも取り上げないよりは良いと思います。しかし、政府・与党の不都合な真実を取り上げるのが、権力チェックを使命とする報道機関の役割ではないのか?「後援会850人のご招待」といった「桜を見る会の私物化」についてはSNSをはじめ多くの取り上げるべき材料があったはずなのに、どうして新聞、テレビなどのマスコミが取り上げなかったのか、マスコミ関係者の感覚が鈍ってきているのか、田村質問を聞きながら思いました。
請負・派遣を利用した製造大企業
田村智子さんとは、2011年6月、お会いして名刺を交換した記憶がありました。横浜で開かれた派遣労働者の闘いをめぐる集会で私が講演したときです。田村さんは、当時、既に参議院議員(厚生労働委員)として活躍されていて、この集会には来賓として参加されました。集会は、日産、いすずをはじめ神奈川の製造大企業で働く派遣労働者や非正規雇用労働者の雇用と権利の確保をテーマとするものでした。
労働組合も多くが企業別正社員組織です。派遣先となる大企業では、労使協調的な労組が多く、その姿勢から派遣労働問題には消極的でした。大企業労組のほとんどが、使用者が異なる別会社(派遣会社)に所属する派遣労働者を労組に加入させることなく、その要求をほとんど取り上げません。その結果、派遣労働者の不満や要求が労組を通しても明らかになりませんでした。
2011年6月の横浜集会は、2008年〜2009年に吹き荒れた「派遣切り」の嵐によって、製造大企業が請負や派遣を打ち切って、ベルトコンベア職場などに受け入れた派遣労働者を職場から排除したのです。自動車製造によって莫大な利益を上げていた企業が、「不況」を口実に、製造過程の現場で働いてきた労働者をボロ切れのように切り捨てたのです。大企業にとっては請負労働者や派遣労働者は直接の雇用関係がある社員ではなく、形式上は請負や派遣の契約を打ち切るだけであり、「解雇には当たらない」と主張しました。
しかし、請負会社や派遣会社は、雇用主としての実体をもっておらず、当事者能力の乏しい「形骸的な存在」、つまり「名ばかり雇用主」に過ぎません。大企業が、請負や派遣を打ち切ってきたら抵抗することなく、当然のように労働者との雇用を打ち切ります。大企業にとっては、請負や派遣という「間接雇用」を利用すれば、「事実上の解雇」を、労組の抵抗も受けずに「痛みなく」行うことができるのです。まさに「毒の缶詰」といえる派遣労働(=間接雇用)の蓋が開いて、その猛毒が最も弱い立場の派遣労働者に振りかかったのです。
(続く)
第28回 話題の「桜を見る会」をめぐる国会質問を見て(2)https://hatarakikata.net/modules/wakita/details.php?bid=31