スペイン語の勉強を始めて約3ヵ月が経過しました(勉強を始めた、理由・きっかけについては、「第66回 世界の労働動向とスペイン語学習」参照)。予想していた通り、なかなか進歩しません。最初に戸惑ったのは、文字・発音がイタリア語などと少し違うことでした。イタリア語も独特の発音や表記がありますが、スペイン語も同様でした。ようやく、”ll”、”y”、”g”、”j”、”x”など、スペイン語独自の文字と発音に慣れてきました。独学ですので、これでも「進歩」と思っています。
まだ、長文の理解は難しいので、初歩の短文を繰り返し覚えています。教材は、主に動画です。ただ、これでは、なかなか先に進めないので、かなり背伸びして、関心のある労働関連のテーマについて、短い文章をTwitterで探しています。今までに、かなりのスペインの労組関係者、労働法研究者などを見つけてはフォローしています。その短い文章を教材にスペイン語の辞書を引きまくり、分からない箇所は文法書で調べます。それでもうまく意味がとれないところは、Web翻訳でイタリア語などに置き換えて理解するという作業です。スペイン語のノートに、毎日、1~2頁、覚えた内容を手書きして記録するのが毎日の日課になりました。
ボリッチ新大統領のTweet
今日は、3月11日に就任したばかりの、チリのボリッチ新大統領のTweetを読んでみました。
また、スペインのヨランダ・ディアス労働相・第2副首相が、ボリッチ大統領の就任式列席のために、前日にチリに到着したときのTweetも翻訳してみました。
以下、辞書を頼りにした日本語仮訳です。
チリの人々(pueblo)、女性たち(mujeres)、少女たち(niñas)、少年たち(niños)、そして男性たち(hombres):
私たちの約束(compromiso)は、あなたたちとのものです。あなたたちこそ、本日始まったこの旅路の主人公です。私たちは歩み続けましょう。常に続けていきましょう。チリ万歳(Viva Chile)!
以上の仮訳では、人々(pueblo)は、「民衆、庶民、人民」といった意味で、英語のpeopleに相当する言葉です。「pueblo bajo」は、「下層階級の人々」の意味ということです。ボリッチ大統領は、日本の与党政治家のように世襲でなく、また、上流階級出身でもなく、まさにpueblo bajoの人々に支持された若い庶民的な政治家です。大統領就任を祝う人々にも親しく駆け寄り、話しかける気さくな性格で、従来の一部の上流階層出身の大統領とは正反対の政治家として注目されています。
これは、最近の中南米諸国、メキシコ、ペルー、ホンジュラスなどの大統領に共通した傾向で、新たな政治の風がチリにも吹いてきたのだと思います。
上の動画は、ボリッチ新大統領がいかに民衆に親しまれているのかが分かる動画です。右は、1973年、軍部のクーデターと、ニクソン米政権の介入で倒れたアジェンデ大統領以来の希望に溢れた国としてチリを訪れたディアス・スペイン労働相のTweetです。
現在、民主的に選ばれた政権を大国が軍事力で破壊する理不尽が、ウクライナで再現されるのではないかという懸念が大きくなっています。私には、若い頃に憤りをもって聞いたアジェンデ政権崩壊と、ウクライナが重なっています。
労働・社会保障改革の方向は?
週40時間への移行が当面の課題
2022年2月22日のElmostrador紙によれば、メルロ現労働社会保障相と、次の労働社会保障相就任が予定されているジャネット・ハラ氏が会談し、正式な引き継ぎ(3月11日)のために会談をしたと報じられています。
会談後、会談後、ハラ氏は、「労働時間を40時間に短縮することが、次期政権における自分の政権の「中心」になること、さらに、年金改革に関心がある。私たちは、三者構成による拠出金で、労働者の負担に主力を置くだけでなく、連帯の要素と国の負担を伴う社会保障モデルへと移行しなければならない」と表明したということです。まだ、ヒアリングができないのですが、以下は、本日(3/12)のハラ新労働・社会保障相TVインタビューです。
コロナ禍の日本では、民衆の生命、生活よりも自己の利権、私利に走り、民主主義や現場で働く労働者を尊重しない政治、とくに、言葉に責任をもたず、化学や専門知識を軽視する政治家の不誠実な姿勢や言葉に辟易する毎日でした。さらに、2月24日のロシア軍による信じがたいウクライナ侵攻など、国内外で暗いニュースが多い中、チリの新政権誕生は、明るいニュースです。民衆の支持と期待を受けて就任した若いボリッチ大統領が、長く独裁と新自由主義の政治で苦しんできたチリの人々のために、政治や経済をどう立て直すのか、対立の多いチリをどうまとめて行くのか、大いに注目したいと思います。とくに、労働・社会保障相に就任したジャネット・ハラ氏は、チリのサンチャゴ大学を卒業し、行政能力に優れた女性として知られており、ボリッチ大統領と同じく、チリの民主運動の中心であった学生運動でも活躍したとのことです。こうしたチリが、どのような新たな道を進むのか、大いに期待できます。とくに女性の地位が低いカトリックの強いスペインとチリ両国で、若々しい考え方をもつディアス氏とハラ氏が労働社会保障相に就任し、女性の地位向上の先頭に立っていることは象徴的な事実です。
日本では、男女平等や労働尊重を毛嫌いする、人権感覚の乏しい政治家・経営者が多すぎます。スペインやチリのように、新自由主義の弊害を乗り越えるためには、新たな時代に対応して、現場で働く人々と寄り添える若い政治家・経営者が大幅に増えることが必要だとつくづくと思います。そのためにも両国のように、労働運動や市民運動の粘り強く、意識性が高く、排除ではなく労働者・市民全体を代表する取り組みが最も重要なのだと思います。