朝日新聞 2013.8.22
リーマン後3年 本社推計
心の病で医者にかかるサラリーマンが増えている。大企業の社員1600万人らが入る「健康保険組合」では、心の病の受診数が2011年度までの3年間で約2割増えた。仕事のストレスが原因となる病気が大半。08年のリーマン・ショック後の景気低迷で「企業のリストラが進み、雇用不安の広がった」との指摘が出ている。
「雇用不安」との指摘
厚生労働省がまとめた医療保険の利用状況調査から、働き手本人が心の病で通院・入院した件数をもとに、朝日新聞が推計した。財政難に陥り解散する健保組合が相次ぎ、全体の加入者数は年々減っているため、加入者1千人あたりの受診件数で比較。現在の調査方法になった08年度以降を対象とした。
心の病による受信件数は、リーマンショックのあった08年度は1千人あたり延べ235件だったが、3年後の11年度は同280件と19%増。心の病以外の病気やけがも含めた受診件数は3年間で8%増え、心の病が全体の倍以上のペースで増えていた。
11年度の心の病の内訳は、うつ病などの「気分障害」が54%で最多。パニック障害などの「神経症性障害」と合わせて、長時間労働やストレスと関係が深い病気が8割超を占める。
世代別では40代が32%と最多で、30代も3割を超えている。20代と50代は10%台と少なく、働き盛りの年代で受診の多さが目立つ。
一方、中小企業の社員約2千万人らが入る「協会けんぽ」加入者1千人あたりの受診数も、比較できる09年度と比べ9%多かった。健保組合の方が増えた割合が大きいのは、中小より大企業の方が受診をうながす環境が整っているためとみられる。
精神障害による労災認定の件数は、10年度以降年間300件を超す高水準。関西大の森岡孝二教授(企業社会論)は「リーマン後、正社員の間でもリストラによる雇用不安が広がった。人が減るなかで多くの働き手が長時間働き、過労とストレスが高まっている」とみている。