平成23年の自殺者は3万651人と、10年以来初めて3万1千人を下回ったが、一方で就職活動の失敗を苦に10〜20代の若者が自殺するケースが目立っていることが8日、政府が公表した24年版「自殺対策白書」で明らかになった。
白書によると、23年の大学生などの自殺は、前年比101人増の1029人で、調査を開始した昭和53年以来初めて千人を突破した。内閣府は「雇用情勢の悪化」を一因に挙げている。警察庁の統計では、「就職失敗」による10〜20代の自殺者数は平成19年の60人から23年は150人にまで増加している。
大学新卒者の就職率(4月1日現在)は過去最低だった23年の91・0%から24年は93・6%と4年ぶりに上昇したが「改善とまではいえない。実際に80社以上申し込んでも内定が得られないという学生もいる」(大学関係者)。
全国自死遺族総合支援センターの杉本脩子代表は「何度も落ちることで次第に追い込まれ、『自分には価値がないのではないか』と孤立感を深めていくのでは」と分析する。
このため心のケアに力を入れる大学も増えている。
千葉県内の私立大の就職課は、リクルートスーツ姿の学生が目立ち始める1〜4月、学生らの「表情」を気にし始めるという。「学生が企業と接触し始めるのがこの時期。厳しい質問に面食らい、ふさぎこむ学生も多いので積極的に声をかけて励ましている」(担当者)。都内の中堅大学では昨年から就職部のスタッフらが4年生全員と面談を実施。「マイナス思考になりがちな学生には、違った見方もあることを伝え、気持ちが前向きになるよう丁寧にアドバイスをしていく」という。
厚生労働省も全国57カ所の「新卒応援ハローワーク」で、内定のないまま卒業した学生のケアを行っている。同省は「顔を見せなくなれば、電話やメールで就職活動再開を促している。学生に寄り添う型の支援がますます重要になってくる」としている。