ブラック企業、相談急増 社会的関心を反映 宮城労働局

河北新報 2013年10月25日金曜日

 宮城労働局への労働相談が急増している。ことし1〜9月の受付件数は前年同期を14.3パーセント(2126件)上回る1万6999件になった。若年労働者の使い捨てや過酷な長時間労働を強いる「ブラック企業」が社会問題化したことなどが影響しているとみられる。労働局は「社会的な関心が高まり、労働者が声を上げる雰囲気が出てきた」と分析している。

 電話などによる労働局への相談件数はグラフの通り。年度末に急増する傾向は同じだが、ことしは4月以降もハイペースで推移している。3カ月ごとの集計で見ると、7〜9月は前年同期を957件上回った。

 厚生労働省経由で寄せられる電子メールによる相談、情報の増加も著しい。1月は5件にとどまっていたのが、9月は64件に膨らんだ。

 宮城労働局によると、従来の過重労働に加え、パワーハラスメントに関する相談内容が増えているという。同局監督課は「勤務先は上場企業から中小零細までさまざま。業種も幅広い」と話す。

 労働相談は、東北の他の労働局でも増加傾向を示している。

 山形労働局は「ニュースなどでブラック企業に焦点が当てられたこともあり、夏ごろから1割程度は増えている」と説明。岩手労働局は「景気が上昇局面に入り、労働者の出入りが活発になっているのも影響している」と分析する。

 過重労働やパワハラの放置は、職場環境を悪化させるだけでなく、事業所間の正当な競争もゆがめかねない。宮城労働局監督課は「重大事案や緊急性があるものから解決に向けて着手している」と話している。

◎過重労働・不払い深刻 国への相談、東北は119件

 厚生労働省が9月1日に実施したブラック企業に関する全国一斉の電話相談では、東北から119件の相談が寄せられた。若年層にとどまらず40代からも悲痛な声が届くなど、劣悪な労働環境の広がりと深刻さをうかがわせた。

 相談内容(複数回答)で最多だったのは「残業代不払い」の54.6%で、次いで「長時間・過重労働」29.4%だった。「月に残業が100時間を超えても手当がない。上司の指示がきつい」(建設業、40代)など賃金、労働時間の双方で問題があるケースもあった。

 パワーハラスメントに関する相談も16.0%に上った。「職場にパワハラ、セクハラがある。自分も本社の上司から受けた」(接客娯楽業、20代)などの声が寄せられた。

 相談者の内訳は本人60.5%、家族23.5%、職場の関係者など16.0%。本人の年齢(判明分に限る)は30代が24.4%と最も多く、20代21.8%、40代18.5%と続いた。

 業種別では商業、製造業、保健衛生業などが目立った。

 相談の中には、30代の息子を案じる父親から「午前0時すぎの帰宅で休日はほとんどない。辞めろと言っても、本人は再就職が心配で退職できない」との訴えがあったという

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