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毎日新聞 2015年02月03日 12時45分(最終更新 02月03日 16時46分)
早朝出勤し、無料の軽食を受け取る下山陵介さん=東京都港区の伊藤忠商事で(省略)
深夜残業を減らして朝型勤務を推奨し、仕事の能率アップを図ろうとする企業の動きが拡大してきた。「朝の方が集中できる」と社員にはおおむね好評で、企業にも残業代を減らせるメリットは大きい。“朝勤”はどこまで広がるか。【神崎修一】
冷え込みの厳しい早朝6時半ごろ、東京・北青山の伊藤忠商事東京本社ビルに社員が続々と出社してきた。地下1階の社員食堂で無料のバナナやおにぎり、缶コーヒーなどを受け取り、職場に急ぐ。
同社は昨年5月、残業時間の削減や社員の健康増進を目的に、午後8時以降の残業を原則禁止し、午前5時から同8時までは深夜勤務と同様の割増賃金を支払う朝型勤務制度を始めた。朝は軽食を無料提供する。
エネルギー・化学品カンパニーの下山陵介さん(25)も、朝型勤務をする一人。「午前9時までは取引先からの電話もなく、仕事に集中できる」といい、パソコンでの資料作成や、上司との打ち合わせに充てている。時間配分の意識も変わった。午後8時には会社を出ないといけないので「残り時間を逆算して仕事をしており、メリハリがついた」と効果を語る。
「かつての商社マンは夜遅くまで働き、それから飲んで未明にタクシーで帰宅……という生活でしたが」。こう語るのは、人事・総務部の梅山和彦さん(45)。2013年10月から朝型勤務を試験導入し、半年後に検証すると、総合職の残業は1人当たり月平均約4時間減り、残業代が約7%削減できた。朝食の費用などを差し引いても4%減だった。
本格導入後は、予想外の効果が見えてきた。まず消費電力量が約6%減った。早朝の方が上司をつかまえやすく、指示を確認したうえで取引先を訪問し、その場で意思決定できるケースが増えた。女性社員には「育児などで夕方早めに退社する際、後ろめたくない」と特に評判がよく、「飲み会は1次会、午後10時までという自発的な取り組みも広がっている」(梅山さん)という。会社説明会では、学生から「商社は残業が多いというイメージが変わった」との声が出るなど、採用面でも期待できそうだ。