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朝日新聞2014年9月10日
日本の高学歴女性の約3割は就労していないことが9日、経済協力開発機構(OECD)の教育に関する調査で分かった。安倍政権は「女性の活躍」を掲げているが、加盟34カ国中最低レベル。OECDのアンドレア・シュライヒャー教育局長は、能力の高い女性が就労するためには、3歳未満の保育を拡大することが必要だと指摘する。
OECDは毎年、加盟国の教育システムについて、財政支出や教育効果を調べている。今回は、2012年現在の数字をまとめた。
日本では、大学以上の学位をもつ高学歴の成人(25〜64歳)の割合は26%。34歳までの若年世代は35%で、OECD平均(30%)を上回った。
ただ、女性の能力は、社会で十分生かされていない。高学歴男性の92%が就労しているのに対し、女性の就労は69%にとどまり、OECD平均(80%)を下回った。高学歴女性の就業率が高い国には、スウェーデンやノルウェーなど、子育て支援が充実している北欧が目立つ。
OECDが昨年発表した、読解力や数的思考力をはかる国際成人力調査(PIAAC)では1位になるなど、日本の成人の能力は総じて高いといえる。だが、高等教育を受け、PIAACの読解力で65%以上の正答率だった成人のうち就労していない人の割合は18%で、加盟国中もっとも高い。男性はOECD平均と同等だが、女性は平均(12%)を大きく上回る32%が就労していなかった。
日本の女性も00年に比べ、3歳児保育を受けた割合が上昇したのに連動するように、高等教育を受けた若年の就業率は5ポイント上昇したという。
女性のキャリアに詳しい日本女子大の大沢真知子教授は、今回の調査結果について、「高学歴女性という資源が生かされていないのは、子育て後に再就職しようとしても単純なパートなどしか選べず、能力に見合う仕事がないことが原因」と分析している。(杉原里美)
■教育は「親の負担大きく」
国内総生産(GDP)に占める教育機関への公的支出の割合を調べた経済協力開発機構(OECD)の今年の調査で、日本が加盟国のうち5年連続で最下位となった。
2011年時点の統計によると、小中学校や高校、大学など全教育機関に対する公的な支出の割合は、日本は3・6%。データのある加盟国31カ国の平均は5・3%だった。最も高いのはデンマークの7・5%で、ノルウェーの7・3%が続いた。
アンドレア・シュライヒャー教育局長は「公的支出はアジア各国の共通課題で、親の負担が大きくなっている。家庭が教育を重視する価値観があるから、教育レベルの高さが保たれている状況だ」と分析した。
日本では10年度から高校の授業料が無償化されるなどしたため、小中学校と高校で公費が占める割合は、00年の90%から、93%に増加した。シュライヒャー局長は「各国が経済危機の影響を受けた中で、日本の公的支出の減り方は緩やかだった」と指摘した。(河原田慎一)