FT サムスン、中国工場で労働法違反か敗訴に追い打ち

(日経web版 2012年9月6日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

米国の非営利組織(NPO)チャイナ・レーバー・ウオッチくCLW)は韓国サムスン電子が中国の6工場で労働法違犯していると発表した。

主力は学生労働者、100時間超える残業

4日公表のリポートでは、一連の「不法かつ非人道的な違反行為」があったとしている。サムスンは米アップルとの注目の裁判で敗訴したばかりだが、その評判がさらに傷つくことになりそうだ。

CLWがサムスンに製品を供給する8工場(うち6工場はサムスンの子会社)を潜入捜査したところ、法定残業時間を超過するのは全工場で日常茶飯事だったという。

さらに大半の工場で労働者の法律上の権利を雇用条件に盛り込んでおらず、上司に不満を伝える手段も不十分だった。

サムスンは即時のコメントは控えたが、6日に声明を発表するという。同社に近い関係者は「労働者に良好な環境を整えるのは会社として当然のこと」としている。

リポートはサムスンの工場が学生労働者を主力にしていると批判。ある工場では16歳〜20歳の工員のみを雇ってると指摘する。雇用と引き換えに最大800元(126ドル)の手数料を支払った労働者もいたという。1カ月の賃金の半分近くに相当する額だ。

全8工場において法定残業時間の限度である1カ月34時間を超えて働いていた。平均残業時間は7工場で100時を超え、186時間に達する工場もあった。

問題の指摘相次ぐ

先月CLWはサムスンの組み立て工場の1つである中国南部・恵州市にある海格国利電子(恵州)(HEGエレクトニクス)の工場で違法労働行為があったと告発していた。16歳未満の児童労働が「常態化」していたとしている。

サムスンは3日、調査員を派遣したが、恵州の工場で法定年齢以下の児童労働の証拠は見つからなかったと発表。一方で「不十分な管理態勢と潜在的に危険な労働慣行」があったことは認めた。

同社はHEGに直ちに労働環境を改善するよう要請。また取引のある中国企業105社へも今月中に立ち入り調査を実施するという。

一方、韓国ではサムスンの半導体工場が労働者を発がん物質から守る対策を怠ったとして非難を浴びている。

裁判所はがんで亡くなった同工場の労働者2人について、対策を怠ったこととの因果関係を昨年認めた。サムソンは現在は安全対策が取られているとしている。しかし同社幹部は今後も同様のケースが続くだろうと非公式に懸念を表している。

この記事を書いた人