http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201601/0008749484.shtml
神戸新聞 2016/1/25
西日本高速道路第二神明道路事務所(神戸市垂水区)で道路の施工管理を担当していた男性社員(34)の自死について、神戸西労働基準監督署が労災認定していたことが分かった。遺族によると、男性の時間外勤務は最大月178時間に達し、退勤から次の出勤まで8分しかない異常な勤務記録もあった。同事務所は残業代の未払いで労基署から是正勧告を受けていたことも分かった。(中部 剛)
男性は2014年10月、九州の道路事務所から赴任し、第二神明の補修、改良を担当。15年2月、神戸市内の社員寮で自死しているのが見つかった。転勤後から「仕事が忙しく時間がない」「体調がよくない」と家族に漏らしていたという。
遺族が第二神明道路事務所から提供されたセキュリティーシステムの入退室時刻やパソコンの使用時間から労働時間を算出すると、転勤直後の14年10月の時間外労働は150時間、11月178時間、12月152時間、15年1月108時間だった。
夜間工事の監督業務にも従事し、14年11月4日は午前7時半に出勤し、昼と夕の休憩を挟んで翌5日午前4時59分まで勤務。その後、午前5時7分に再び出勤した記録がある。同月は午前5、6時の退勤が4日あり、うち3日は次の出勤までの間隔が8分、26分、2時間18分だった。
同事務所の労働時間を管理する就業管理システムには、月34〜85時間の時間外勤務しか記録されておらず、勤務実態を大幅に下回っていたため、会社側から遺族に残業代の追加支払いの申し出があったという。他の従業員も残業代の未払いがあったとみられ、昨年、神戸西労基署が是正勧告。西日本高速道路関西支社は勧告があったことを認めたものの、「詳細は差し控える」としている。
遺族は「こなし切れない仕事量を課され、明らかなパワハラだ」と憤り、同社に勤務状況を詳細に説明するよう求めた。男性社員が搬送された病院で上司の課長が「業務量に対し明らかに人手が不足していた」と謝罪。その後、所長も管理責任を認めたという。
これに対し、同支社広報課の赤井健二課長は「労災認定を重く受け止める」とするものの「業務との因果関係について断定的なことは申し上げられない。時間外労働、謝罪の有無にもコメントできない」と企業責任については言及を避けた
森岡孝二・関西大学名誉教授(労働時間論)は「過労死ラインと言われる『月80時間』を超す残業を認める労使協定を結ぶ企業は少なくない。過労死防止には一定以上の残業を認めない36協定の厳格化が必要だ」話す。また、男性社員の遺族が指摘するように月100時間以上の時間外労働があったとすれば、労使協定違反にもなり、同社の労働組合は「会社から説明を受けたい」とする。男性社員の勤務記録では、退勤から次の勤務までの時間が極めて短い日もある。森岡名誉教授は、「勤務間の休息時間を義務づける『勤務間インターバル制度』が求められる。欧州はすでに導入しており、日本でも労働者の健康、安全のため法整備が必要だ」と指摘する。