死亡事故前、36時間一睡もせず 勤務状況が明らかに

写真・図版:事故が起きた八本松トンネルの東側(岡山県方面)入り口付近の当時の様子=昨年3月17日午前10時38分、東広島市、清水康志撮影(省略)
 広島県東広島市の山陽自動車道で昨年3月、トラックが車列に追突し、2人が死亡した多重事故について、国の事業用自動車事故調査委員会が6日、調査報告書を公表した。運転手が事故前に一睡もせず計36時間乗務を続けていたことなど、事故に至るまでの詳細な状況が明らかになった。
 【事故状況など】
 昨年3月17日午前7時26分ごろ、東広島市の八本松トンネルで渋滞中の車列に男性運転手(34)のトラックが時速約80キロで追突。計12台がからむ多重事故となり2人が死亡した。運転手は自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)罪などに問われ、懲役4年の判決が確定した。
 報告書によると、運転手は勤め先に関して「休みがとれなくてイライラしたことも多かった」とする一方、「疲れているとか眠いということは、弱音を吐いていると思われるので運行管理者=道路交通法違反(過労運転下命)罪などで懲役1年6カ月執行猶予3年が確定=には言わなかった」と説明した。報告書はこうした聞き取りや運行状況のデータから事故3日前の動きを詳細に調べた。
 【事故3日前〜2日前】
 運転手は同14日午前5時42分から翌15日午後5時31分まで荷下ろし作業の順番待ちをするなどして約36時間一睡もせず乗務。その後福岡市まで荷物を運ぶ予定だったが、運転免許証の更新のため出発が1日遅れた。その際運行管理者からは「ほぼ全区間高速道路を走るので、予定の時刻には間に合うだろう」と言われ、運転手は仮眠を2、3時間にすれば間に合うと考えていた。
 【事故前日】
 運転手は同16日午後5時47分、埼玉県川口市の営業所を出発。静岡県浜松市内のサービスエリアで休憩しようと思っていたが、出発が遅れたため、そのまま運転を続けた。
 【事故当日】
 その後眠気を感じ、同17日午前0時48分に兵庫県加古川市内のパーキングエリアで停車。車内で仮眠を取り、午前4時40分に起きた。眠くて気だるさを感じたが、到着予定時刻まで余裕がなかったことから運転を続けた。その後目がしょぼしょぼし始め、いつの間にか眠った。衝突音で目覚めたが、なぜ事故が起きたかわからず、車を降りた後に付近の状況を見て、自分が事故を起こしたと思ったと言う。
 【事故原因】
 調査委は運転手は事故前3カ月で休みが9日しかなく、疲労が蓄積しているのに十分な休憩を取らずに長時間の連続運転を行ったため居眠り運転をした可能性が高いと指摘。運行管理者に対しては、過酷な勤務状況を把握しながら疲労回復の措置を取らなかったことも事故につながった原因と結論づけた。(小林圭、宮川純一)

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