働き方の改善で組織強化へ/自治労の定期大会 (9/4)

働き方の改善で組織強化へ/自治労の定期大会
https://www.jil.go.jp/kokunai/topics/mm/20190904.html
JlL 2019年9月4日 調査部

[労使]

地方自治体の職員などを主に組織する自治労(川本淳委員長、78万5,000人)は8月27日から3日間、福岡県福岡市で定期大会を開催した。向こう2年間の新たな運動方針では、職場の組合員からの要求に基づいた働き方の改善に向けた取り組みなどを柱に据えた。役員改選を行い、これまで2期(4年)、中央執行委員長を務めてきた川本氏(北海道本部)が再選された。

組合員の減少と加入率低下に危機感

新運動方針は、組合員数の減少や加入率の低下に対する危機感をあらわにし、今後の運動で基軸とすべき課題について、? 職場要求に基づき、仲間の働き方と生活を改善する ? 地域に根差し、「総合力と多様性」の自治体をめざす ? つながり合い・支え合える組合をつくり、組織を強化する――の3点を掲げた。

自治労によると、組合員数は2000年から2017年までで20万人以上減少しており、自治労全体の地方公務員における組織率は2017年で67.8%にまで低下した(2000年は77%)。

とくに深刻なのは新規採用者の加入率で、2000年までは80%弱で推移していたものの、2016年〜2017年は65.9%にまで低下。方針はその背景として、交渉ができていない単組の増加や、県本部と単組間の関係の希薄化、若手組合員の運動離れなどを指摘する。

こうした状況をうけ方針は、一つめの課題の克服に向け、「労働時間や労働環境の改善、業務に応じた配置人数の増強、賃金引き上げなど、具体的な職場の課題について、実態と組合員の意見をもとに要求を積み上げ、当局交渉を実施する中から、働き方と生活の改善を勝ち取る。さらに、格差の解消をめざし、安易な使い捨て労働と賃金の低位平準化を蔓延させないため、非正規労働者の処遇改善と組織化を進める」と記述。具体的な取り組みについて、「長時間労働の是正が喫緊の課題」であることを強調し、十分な人員の確保のほか、時間外労働の縮減に向けた個人・職場単位での労働時間の実態、年休・代休の取得状況の点検を行うとした。業務量や任務分担、配置人数の具体的な見直しについての当局との交渉・協議も行う。

非正規労働者の処遇改善と組織化では、地方公務員法・地方自治体法の改正により、来年4月から「会計年度任用職員」制度がスタートし、一般職非常勤が原則として同職員に移行することから、これを契機に組織化と処遇改善を一体的に進めると記載した。

組合員の声を集約した要求根拠をつくる

二つめの課題については、自治体に求められているのは「地域・自治体ごとに異なる公共サービスに対するニーズをくみ取り、地域の持続性と住民の生活を守り、地域にあるさまざまな資源を活用する『総合力と多様性』だ」と強調し、「地域をよくしたい」という思いや地域への関心など、仕事に対する組合員の疑問や改善案を拾い上げ、話し合う場をつくることで広い組合員の参画を促すなどとした。

三つめの課題に関しては、幅広い組合員層の参画をめざす一方、組合員の声を集約した要求根拠をつくりあげるため、職場委員会や分会を設置しながら、職場における問題点を幅広い視野で討議し、自信をもって当局交渉に臨むサイクルづくりをめざすとした。組織強化の観点では、組合員、単組、県本部、本部をつなぐ情報ネットワークを拡充するとし、積極的な情報発信で未加入者への加入促進や未組織の組織拡大につなげるなどとしている。

組織化目標は「4年間での80万人自治労の回復」

大会では、組織強化と組織化の取り組みに関して、向こう4年間の組織化計画である「第5次組織強化・拡大のための推進計画」も確認した。

前回の第4次計画では、? 次代の担い手育成 ? 新規採用者の組織化 ? 非正規労働者10万人組織化――を重点課題に設定して取り組んだが、結果は、「自治労全体で掲げた目標に対して到達状況は十分とはいえない状況となった」。第4次計画を組織内で総括した際の議論では、「単組で方針や計画が確認、理解されても、具体的な取り組みとして展開されていないこと」などが課題としてあがったという。

こうした反省を踏まえ第5次計画は、「単組役員が置かれた環境のもとで、自治労全体で組織強化・組織拡大を進めるためには、シンプルでわかりやすく、単組で具体的な行動に結びつく計画と目標を設定すること、日常の単組活動の強化と組織拡大を一体的に取り組むことが必要」だとまとめ、「さらには、単組役員を取り巻く職場の理解の醸成、県本部、本部のサポートの強化が求められる」と訴えた。

そのうえで、第5次計画の目標を「4年間での80万人自治労の回復」と設定。具体的な取り組みとして、単組レベルでは組合員との対話を重視するほか、組合員の意見を引き出すための職場オルグや集会など、伝える活動を強化するとした。県本部では、単組課題の把握と解決に注力するとともに、地域での単組どうしの情報交換なども支援する。一方、本部では、組合員や単組に「見える」自治労運動の推進に取り組み、人材育成プログラムも作成するなどとしている。

組織化のターゲットについては、新規採用者、会計年度任用職員、再任用・再雇用者などをあげた。新規採用者では、最低でも70%加入をめざすとした。

会計年度職員では現条件を下回らない交渉を要請

あいさつした川本委員長は「今回の第5次計画の大きな目標として『単組活動の活性化』をメインとした。現在、残念ながら単組の活動が停滞し、若年層を中心に労働組合に結集してこないような実態も各地から報告されている。魅力ある組合活動を展開する中から、ひとりでも多くの組合員が運動に参加し、単組役員がいきいきと活動することは、組織強化と組織拡大の大前提だ」と強調。「労働組合にとって『数は力』だ。単組活動を県本部、本部が支える体制づくりが重要であることを全体で共有化し取り組みに結集してほしい」と組合員に呼びかけた。

一方、臨時・非常勤等職員について川本委員長は、2020年4月からの「会計年度任用職員」制度のスタートに向けて「9月議会で条例制定を行う自治体が多いと思うが、当事者である臨時・非常勤等職員の声を聞き、意見を集約し、最後の詰めの交渉を行って欲しい」と呼びかけるとともに、すでに条例化している自治体単組でも現在の賃金労働条件を下回らない交渉・協議に臨むことを要請した。

川本淳委員長体制が3期目へ

先の参議院選挙では、組織内候補の岸まきこ氏(立憲民主党)が15万7千票あまりの個人票を獲得し、当選した。ただ、川本委員長は、「自治労の組織力量が問われる選挙として位置づけていたにもかかわらず、獲得した目標に大きく届かず、前回の参院選(2016年)の得票数を下回るなど、今後に大きな課題を残す結果となった」と述べた。次期衆院選に向けては「野党間の連携共闘がどこまで本気でできるか、結束して与党に立ち向かっている姿を見せて、国民に期待させられるかが課題であると思う」と話した。

役員改選では、2期(4年間)委員長を務めた川本氏(北海道本部)が再選された。書記長は、福島嘉人氏(神奈川県本部)にかわり、福岡県本部の鬼木誠氏が就いた。副委員長は、青木真理子氏(島根県本部)、高橋篤氏(大阪府本部)、書記次長は伊藤功(山形県本部)という顔ぶれとなった。 

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