しんぶん赤旗 2014/08/12
人手不足で残業が続き、職場で作業中にケガをするなど、労働災害が急増しています。厚生労働省のまとめでも、製造業や建設業、陸上貨物運送事業などでことしの上半期(1〜6月速報値)の死亡災害が急増しており、小売業などの第3次産業でも休業4日以上の死傷災害が増えています。同省も「労働災害のない職場づくり」を業界などに要請しました。労働災害急増の背景には、人手不足や熟練不足とともに、長時間労働の横行など、人間性を無視した働かせ方があります。労働災害をなくすためにも、人権無視の働かせ方の一掃が不可欠です。
1年前より2割も増えた
厚労省のまとめでは、今年上半期の労働災害による死亡者数は、全産業で437人と昨年同期より71人、19・4%増と2割近くも増えています。休業4日以上の死傷者数も4万7288人にのぼり、昨年同期より1625人増えています。安全でなければならない職場で、亡くなったりケガをしたりする人が増えているのは見過ごしにできない重大事態です。
死者がもっとも多い建設業では、屋根や足場からの「墜落・転落」や建設機械などの「はさまれ・巻き込まれ」が目立ちます。鉄筋工や型枠工など技能労働者の人手不足が背景にあります。トラックなど陸上貨物運送事業では荷積みや荷下ろしでの「墜落」が多くなっています。製造業では経験年数1年未満の労働者の「はさまれ・巻き込まれ」災害が増えています。
ことしの労働災害による死者数が増えたのは、2月の2回にわたる大雪で交通事故や転倒事故が増えたことや、4月からの消費税増税前の駆け込み需要による増産・物流増などの影響があると厚労省は見ています。しかし、4月以降も労働災害は前年を上回る傾向にあり、今後駆け込み需要の反動が和らぎ生産が増えれば、再び災害が増加することを懸念します。
企業は公共事業の発注増や増産で仕事が増えても正規雇用の労働者は増やさず、これまでいる労働者の残業を増やしたり、臨時やアルバイトなど非正規の雇用を増やしたりして対応しようとします。長時間労働で疲れがたまり、なれない仕事をさせられて労働災害に巻き込まれるというのは、絶対に許されることではありません。
日本の労働現場で労災の増加が目立ち始めたのは最近では2009年の世界的な金融危機以降です。休業4日以上の死傷者数は、10年、11年、12年と3年連続で増加、13年も年間11万8157人と、前年とほとんど変わっていません。「過労死」や自殺、「心の病」と認定される人も目立っています。もうけ最優先で雇用を増やさず、労働者に長時間労働などを押し付ける、過酷な働かせ方が背景にあるのは明らかです。
社会的にも損失は明白
長時間労働が労働者を使いつぶしている実態が、最近牛丼チェーン「すき家」の第三者委員会報告でも明らかになりました。「月500時間以上の勤務」「体重が20キロ減った」などのすさまじさです。
人権無視の働かせ方で労働者を使いつぶし、労働災害まで生んでいるのは社会的にも損失です。企業も長続きしません。長時間労働など人間性無視の働かせ方を一掃することが、労働者にとっても社会にとっても文字通り急務です。