朝日新聞 2014年12月5日
18歳以上の若者に選挙権を与える――。実現すれば70年ぶりとなる選挙権年齢の引き下げが見えてきた。
自民、公明、民主、維新など7党の議員が先月、そのための公職選挙法改正案を衆院に共同提出した。
衆院解散で廃案にはなったが、7党は来年の通常国会に再提出し、成立をめざす。法案づくりに携わった議員は、2016年の参院選からの実施をめざしている。
自民党内などには、若者への選挙権拡大に慎重な意見が残る。だが、少子高齢化で数が減り、ただでさえ投票率が低い若い世代の意思を政治により反映させるためにも、18歳からの選挙権には大きな意義がある。
通常国会で確実に実現させるよう各党は努力すべきだ。
今回の選挙権年齢引き下げの議論は、憲法改正のための国民投票を18歳以上に認めることにする6月の国民投票法の改正を受けた動きだ。
国民投票の投票権年齢を18歳以上とするのは、憲法改正という重大事の判断にあたっては、将来を背負う若い世代にも参加してもらうべきだ、という考えによる。
ならば、負担の分かち合いが避けられないこれからの国政や地方自治を考えれば、議員や首長の選挙へも18、19歳の参加を拒む理由はない。
そもそも、選挙権を20歳からに限っているのは世界的には少数派だ。国立国会図書館のまとめでは、データがある191カ国・地域のうち「18歳以上」は176。その中には、「16歳以上」の国もある。
若者の政治参加を促すNPO法人「Rights」によると、国政または一部の州や自治体選挙で16歳から投票を認めているオーストリアやドイツでは、10代の投票率は20代前半より高いという。親と一緒に行くことができ、高校でも「投票に行こう」という機運がつくられやすいのが理由のようだ。
高校生が選挙権を持つとなれば、政治に対する知識や判断力を家庭や学校教育を通じてどう養っていくかも問われることになる。難しい課題ではあるが、そうした議論を進めること自体が、社会全体で民主主義のあり方を再確認するきっかけにもなりうる。
16年夏の参院選からの実施となれば、いまの高校1年生も誕生日が過ぎていれば投票することができる。そう考えれば、いま行われている衆院選に対しても、より大きな関心がわいてくるのではないだろうか。