「新型コロナウイルス 雇用・賃金 広がる不安」(くらし☆解説)
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NHK News 2020年03月13日 (金) 今井 純子 解説委員
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【仕事に影響がでている方。多いですね】
そうですね。国内では、学校の休校を始め、キャンセルや自粛、休業といった動きが相次いでいます。
これを受けて、労働組合などには、
▼ 子どもが家にいるため会社に仕事を休めないか相談したら、「給料はでない」と言われた。
▼ 働いている塾が、お休みになった。働いた時間に応じた賃金なので、収入が減って困っている。
▼ パートで働いていたホテルから、「キャンセルが相次いでいるので休んでほしい」と言われたが、補償がない。
▼ フリーランスで、ヨガの指導をしているが、施設が休業になり、指導料がもらえない。
こうした相談が、次々寄せられているということです。多くは非正規やフリーランスで働く人たちからの相談です。
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【政府も、対策は打ち出していますよね】
はい。政府は、今週、第2弾の緊急対応策をとりまとめました。働く人向けには、こどもの学校がお休みになって仕事を休まざるを得ない場合と、仕事が急激に減って会社から休むよう言われた場合と、大きく2つのケースに分けられます。
▼ まずは、こどもの学校が休みになったことで、仕事を休まざるをえなくなった場合。会社に勤めている人には、通常の有給休暇とは別枠で、特別な有給休暇を取れる「助成金」の制度が創設されることになりました。対象になるこどもは、小学校まで。特別支援学校は高校までで、勤め先の会社が、社員に休んだ分の通常の賃金を支払い、その後、国に申請すれば、一日一人当たり最大8330円の助成金が会社に支払われる形です。正社員だけでなく、パートなど非正規の社員も対象で、半日休暇や時間単位の休暇でも、それに応じた賃金がもらえる仕組みです。
【申請は、会社側がするのですね】
そうです。会社側が申請をします。ただ、これは任意の制度です。国は、できるだけ制度を利用して、社員に賃金を払うよう呼びかけていくとしていますが、会社が「手続きが面倒なので申請をしない」と言った場合など、強制できないという限界もあります。
一方、会社に勤めていないフリーランスなどで、業務委託の契約をして働いている人が、こどもの世話をせざるをなくて、決まっていた仕事を休んだ時には、支援金が受け取れる制度が設けられました。こちらは、働いている人が自ら申請をしなくてはいけませんが、一日あたり4100円の定額が支援されます。申請の詳細はまだ検討中で、決まり次第、厚生労働省のホームページなどで公表されることになっています。
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【一律一日4100円ですか。低くないですか?】
政府は、フリーランスの人は、働き方や報酬、契約の形態がばらばらで、迅速に支払いをするために、一律の金額で決めたとしています。が、水準について、正社員と比べて低すぎるという批判があがっています。
【一方、塾の休校などの影響で、仕事を休むよう言われた人はどうなるのでしょうか?】
会社から休みをとるよう言われた社員については、平均賃金の60%以上の休業手当をもらうことができるケースがあります。会社側の一方的な都合で社員を休ませた場合、支払いが義務付けられていますし、そうでなくても、会社が任意で休業手当を支払うケースもあります。国は、手当てを払った会社に一定の助成金を払う仕組みを、今回、拡充して、これを利用して休業手当を払うよう呼び掛けていくことにしています。こちらも、正社員だけでなく、雇用保険に加入している(週20時間以上働いている)非正規社員も対象になります。また、緊急事態宣言が出されている北海道は、雇用保険に加入していない人たちも対象になります。
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【フリーランスの人で、仕事がキャンセルになった場合はどうなのですか?】
仕事のキャンセルで収入が減ったフリーランスの人、そして売り上げが減った小規模な個人事業主で、事業がなりたたなくて困っている人には、資金繰りを支援するために、日本政策金融公庫などから、実質的に無利子・無担保でおカネを借りられる、特別の融資制度が創設されました。ただ、これはあくまでも融資で、収入が減った分を補填する制度ではありません。審査が必要なのですぐにおカネが借りられるわけでもありません。
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【収入がなくなって生活に困る人もでてきそうですね】
そのように一時的に、生活資金が必要だという方には、市区町村の社会福祉協議会から、簡単な手続きで、緊急で最大10万円(小学校の臨時休業などの影響の場合は最大20万円)、無利子・無担保で借りられる特例も設けられました。(3月中にも開始予定)消費者金融などに駆け込む前に、こうした制度を利用していただきたいと思います。
【いろいろ制度はできたようですが、任意の制度もあるということですね。会社が賃金や休業手当を払ってくれない場合は、どうすればいいのですか?】
会社側がこうした制度を知らない場合もありますので、まずは、政府が制度を広く周知することが大事ですが、会社が賃金などの支払いに応じてくれない場合、都道府県にある労働局の特別相談窓口や連合など労働組合の相談窓口、労働問題に詳しい弁護士などの専門家に、相談をしてみてください。フリーランスや個人事業主などの特別融資制度については、お近くの日本政策金融公庫などに相談窓口が設けられています。
その上で、イベントの自粛や、施設の休業などが続く場合、政府の要請ということもありますので、賃金・収入を支えるための制度をさらに拡充することも検討してほしいと思います。
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【生活に行き詰まる人がでないようにしてほしいですよね】
そうなのです。賃金に加えて、雇用も心配です。すでに、労働組合などには、
▼ 転職先が決まっていたのが、新型コロナウィルスの影響で取り消しになった。
といった、相談が寄せられていて、解雇や雇い止め、内定取り消しの動きが広がる心配が出ています。新型コロナウイルスに便乗した違法解雇にあたる場合もありますので、納得できないという場合も、先ほど触れた、労働局の窓口などに相談をしてみてください。
ただ、雇う側の企業。特に、体力がない中小・零細企業の中には、経営そのものが厳しいところもでてきています。日本政策金融公庫には、
▼ 中国から必要な部品が入ってこないため、工場の稼働率が大幅に下がって、資金繰りが非常に厳しい。
▼ ホテルや飲食業で、キャンセルが相次いで、社員の給料や家賃の支払いができない。といった悲痛な相談もきています。
経営が破たんしたり、事業を停止したりする企業も増えていて、このままでは、失業が広がる心配もでてきます。
【心配ですね】
このように、売り上げが急激に減っている中小企業も雇用を支えるため、さきほど触れた、実質的に無利子でおカネが借りられる制度を利用することができます。
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新型コロナウイルスの感染拡大がストップして、外出の抑制やイベント自粛がなくなると、徐々に、お客さんが戻ってくる。長い目で見ると、国内では、人手不足が続くという見方は、まだ根強くあります。それだけに、政府は、今この厳しい状況で、なんとか賃金と雇用を支え、生活に行き詰まる人がでないよう、力をつくしてほしいと思います。
(今井 純子 解説委員)