コロナで突然の解雇予告、非正規はどうすれば? 「安心して休んで」から一転、「2週間後に辞めて」 (3/26)

コロナで突然の解雇予告、非正規はどうすれば? 「安心して休んで」から一転、「2週間後に辞めて」
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弁護士ドットコム 2020年03月26日 10時16分

写真はイメージです(【IWJ】Image Works Japan / PIXTA)

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、自主退職や解雇など雇用への影響が出始めている。ネット上には、アルバイト先から解雇を言い渡され、「奨学金が返済できない」「シングルマザーで子どもたちがいるのに…」などという声が上がっている。

弁護士ドットコムにも「新型コロナの影響という理由で突然解雇予告された」というパート従業員が悩みを寄せている。

●「自宅待機」から「解雇」へ…

相談者は当初、会社側に「安心して休んでいいからね」と言われ、自宅待機をしていたという。子どもの学校が休校になったことから、当初は休むことができ、安心していたようだ。

ところが、約1週間後に会社から「もう会社のことは気にしなくていい。仕事も他に依頼した」という連絡があった。相談者が「解雇ということですか? 自己都合退社にすれば良いのですか?」と聞いても、明確な返答は得られなかった。

後日、相談者が「せめて退職日を決めてほしい」とメールすると、2週間後の日付が送られてきた。相談者は会社側に「解雇」とハッキリ言われておらず、退職日が2週間後であることに納得できないという。

このように、突然の解雇に納得できず、不安を抱えている人たちは少なくない。パートやアルバイトなどの非正規労働者が解雇、雇い止めを言い渡された場合、どのように対応すべきなのだろうか。労働問題に詳しい波多野進弁護士に聞いた。

●「原則として自主退職に応じるべきではない」

ときどき「非正規労働者は解雇されても仕方ない」と諦めてしまう人もいるが、解雇の有効性について争うことはできるのだろうか。

「はい、非正規の方でももちろん、解雇の有効性をめぐって争うことはできます。非正規労働者と一言で言っても、短時間のパート、アルバイトもいればフルタイムで働く人もおり、働き方はさまざまですが、正社員と同様に労働者であることに変わりはありません。雇用形態にかかわらず、不当に解雇することは認められていません」

「自主退職」と「整理解雇(会社の経営上の理由による人員削減として行われる解雇)」にはどのような違いがあるのだろうか。

「非正規労働者でも一定の条件を満たしていれば、失業手当を受給することができます。自主退職となると、失業手当の支給期間や待機期間で不利になります。一方、整理解雇は会社都合による退職ですから、失業手当の受給の点でも自己都合退職より有利です。

また、自主退職ならば、従業員の地位を求めたり、賃金請求したりすることは原則としてできません。しかし、整理解雇であるならば、解雇が無効であるとして地位の確認を求め、解雇後の賃金を請求する法的手続きも取ることができます。

そのため、原則として自主退職に応じるべきではないと思います。

なお、整理解雇の有効性は、(1)人員削減の必要性、(2)解雇回避努力義務の履行、(3)人選の合理性、(4)手続きの妥当性から判断されることとなっています」

●自主退職を促されたら…「まずは明確に就労を求める」

自主退職を促された場合、断ることはできるのだろうか。

「できます。辞めるかどうかは労働者が決めるべき事です。正社員であっても、パートやアルバイトであっても『労働者』であるという点では同じです。

解雇かどうか曖昧のままにすると、使用者側が『一方的に自主退職した』という扱いを強行することもありえます。

そこで、まずは明確に就労を求めることです。それでも使用者側が拒否するようであれば、就労拒否後の賃金を請求する方法が考えられます。解雇ということであれば、解雇無効として解雇後の賃金を請求するという対処が考えられます」

●解雇は「無効」であるとして解雇後の賃金請求を

解雇をするには、原則として使用者は少なくとも30日前に解雇予告をするか、解雇予告手当(30日分以上の平均賃金)を支払うことが必要となる(労働基準法20条)。

しかし、相談者のように退職日が2週間後とされたり、突然電話で「明日から来なくて良い」などと言われたりする人もいるようだ。このような場合、解雇予告手当を請求することはできるのだろうか。

「解雇予告手当を請求することはできると考えます。実際に労基署に相談すると、解雇予告手当の請求を勧められることが少なくありません。

しかし、解雇予告手当を請求するのではなく、それよりも解雇は無効で従業員の地位があることを前提に解雇後の賃金を請求する方が、このような立場の労働者の方々にとって有効な対応方法だと思います。

解雇されそうになっていたり、退職を迫られたりして解雇された場合には、使用者側から求められる書面(退職届など)に署名や提出をすることなく、まずは早期に労働問題をよく担当している弁護士に相談して有効な手段を講じるべきです」

取材協力弁護士
波多野 進弁護士
波多野 進(はたの・すすむ)弁護士
弁護士登録以来、10年以上の間、過労死・過労自殺(自死)・労災事故事件(労災・労災民事賠償)や解雇、残業代にまつわる労働事件に数多く取り組んでいる。
事務所名:同心法律事務所
事務所URL:http://doshin-law.com 

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