ウーバー労組、労働委に救済申し立て 団交拒否「不当」 ギグの働き方争点に
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2020/3/16 15:30日本経済新聞 電子版
宅配代行サービス「ウーバーイーツ」の配達員らでつくる労働組合「ウーバーイーツユニオン」は16日、ウーバー側が団体交渉を拒否したのは不当労働行為にあたるとして東京都労働委員会に救済を申し立てた。ウーバーのようなデジタルプラットフォーマーを相手取った救済申し立ては日本で初めて。ネットを介し単発で仕事を請け負う「ギグワーカー」の権利を巡る議論が国内でも本格化することになる。
ユニオンの前葉富雄執行委員長(写真中央)は「配達員の言いたいことを言える環境に」と話す(16日、東京・千代田)
ウーバーイーツユニオンによる救済申し立ての対象となっているのは、日本での実務を担うウーバー・ジャパン(東京・渋谷)と、配達員と契約関係にあるウーバー・ポルティエ・ジャパン(同)の2社。日本での事業を管轄する米ウーバーテクノロジーズのグループ会社だ。
ユニオンは2019年10月、ウーバー・ジャパンに団交を申し入れた。その後、オランダに本社を置く配達員との契約先であるウーバー・ポルティエBVから「日本の労働組合法上の『労働者』に該当しない」として拒否された。11月には日本で設立されたウーバー・ポルティエ・ジャパンにも団交を申し入れたが、拒否されている。
ウーバー側が団交を拒否するのは、配達員を個人事業主と見なしているためだ。ウーバーイーツの利用規約には、配達員が「Uberまたはその関連会社により雇用されていない独立した第三者」としてサービスを提供するとされる。規約が想定する個人事業主は、労働組合法などの制度が適用されていない。
しかし、ユニオン側は、配達員が実態として事業組織に組み入れられており、契約内容を会社が一方的に決定していることなどを理由に「判例からも労働組合法上の労働者に該当するのは明らか」(川上資人弁護士)としている。
海外でもウーバーのようなプラットフォーマーと契約したギグワーカーを「雇用された労働者」と判断する事例が増えている。1月には米カリフォルニア州で、ギグワーカーに従業員としての権利を保護する州法「AB5」が施行された。フランスの最高裁は3月、ウーバーテクノロジーズと同社のライドシェアを手がける運転手に雇用関係があるとの判断を下した。「運転手は独自の顧客を持たず、運賃を自由に決められない」ことなどを理由にあげている。
日本ではコンビニエンスストアの加盟店主が、本部と事実上の労使関係にあるとして、団交に応じるよう労働委員会に申し立てたケースもあった。3月、国の中央労働委員会は加盟店主に団体交渉権を認めない判断を示したが、本部側に解決の仕組みをつくることが望ましいと一定の「配慮」を求めている。
今後、労働委員会は当事者の調査と審問を経て、団交の拒否が不当労働行為に当たるか否かを判断することになる。ギグワーカーという新しい働き方をどのように位置づけるか、本格的に議論が始まることになる。