新型コロナ対応で雇用調整助成金の支給を100%に 特例措置のさらなる拡大へ (4/27)

 政府は、新型コロナの感染を防ぐための緊急事態宣言を出しましたが、それに伴う休業要請のために、多くの人が仕事を打ち切られ、解雇や雇い止めに遭っています。これを防ぐためには、政府が企業に自粛を求める代わりに、経済的な補償をするのが筋だと思います。しかし、安倍首相は、休業に対する補償はしないと明言する一方、微々たる補正予算での限定的30万円支給を閣議決定しました。それに対する世論や野党の強い反発を受け、自民党内や公明党内からも批判されて、ようやく10万円の一律支給に「朝令暮改」の変更を行いました。
 企業には新型コロナによる緊急事態中の解雇・雇い止めを禁止する法規制が必要だと思います。しかし、安倍政権は、そうした規制ではなく、既存の雇用調整助成金の一部を修正する特例措置という微温的対応で済ませようとしています。
 4月25日、加藤厚労相が、発表したのは、5月上旬から特例措置措置をさらに拡大するという予告でした。
 雇用調整助成金については、使用者が雇用を維持しつつ、休業手当を支給するという「間接的な仕組み」でしかありません。平均賃金の60%しかない休業手当(労基法26条)そのものが不十分です。できるだけ全額支給することを助長するために、雇調金の助成率を高めて休業手当100%支給するように誘導するものです。
 なお、雇用調整助成金は、あくまで事業主への助成であり、労働者が直接請求できるものではありません。事業主が助成を申請することを前提にするという問題があります。事業主の申請を待ち、さらに助成金支給の手続きが簡単でないこと、通常、2ヵ月後に助成されるという手続き上の問題も浮き彫りになっています。そうした手続きに時間がかかりすぎるという点では、未払い賃金立替制度のように、収入を失う労働者が、国に直接休業手当を請求できる制度が必要だと思います。
さらに、今回の新型コロナについては大震災と同様に「災害」だと解釈して失業給付の特別措置をするべきだと言う説得的な主張がされています。従来の雇用調整助成金や休業手当の制度的限界を越える積極的な休業・生活保障を行うことが政府には強く求められています。(swakita)


雇用調整助成金とは
 経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、雇用の維持を図るための休業手当に要した費用を助成する制度
新型コロナウィルス感染症関連の特例措置
 支給額は、対象労働者1人1日当たり8330円が上限
 従来、休業手当60%の場合、雇用調整助成金9/10(60%×9/10=54%、会社負担6%)
     休業手当100%の場合、雇用調整助成金9/10(100%×9/10=90%、会社負担10%)

(厚生労働省HP 雇用調整助成金)

4月25日 厚生労働省発表(加藤勝信厚労相)雇用調整助成金の拡充を発表した
(概要)休業している中小企業が前年の賃金の100%の水準の休業手当を支払う場合→国が全額を補助
    全国に約360万社あるとみられる中小企業のうち、
(対象)緊急事態宣言後、自治体の休業要請に応じた企業が対象
(目的)新型コロナウイルス感染症の拡大防止が図られる中で、経済活動に急激な影響が及ぶとともに、
    長期にわたる休業が求められており、労働者の雇用を維持し、その生活の安定を確保すること
(備考)適用日は4月8日以降の休業等に遡及し、4月8日以降の期間を含む支給単位期間に適用する。
    今回は、事業主が安心できるよう政府としての方針を先行して表明
    特例措置の詳細は、5月上旬頃を目途に発表する予定だ。 

◆拡充1 中小企業が雇用を維持し、60%以上の休業手当を支払う場合、60%超の部分は助成率100%に(特例措置)
  中小企業が解雇等を行わず雇用を維持し、賃金の60%を超えて休業手当を支給する場合
  60%を超える部分に係る助成率を特例的に10/10(100%)に
  (60%までの部分、9/10助成=54%、60%を超える分10/10=40%、合計94%助成、会社負担6%)
  教育訓練を行わせた場合も同様に支給
  →支払能力の乏しい企業においても、労働基準法上の基準(60%)を超える高率の休業手当が支払われる

◆拡充2 休業要請に協力した中小企業で雇用維持する場合、休業手当全体の助成率100%に(特例措置)
 新型インフルエンザ等対策特別措置法等に基づき都道府県対策本部長が行う要請により、
 休業又は営業時間の短縮を求められた対象施設を運営する事業主であって、
 これに協力して休業等を行った場合は、さらに助成率を引き上げた。
 上記の事業者が、「労働者の休業に対して100%の休業手当を支払い」「上限額(8330円)以上の休業手当を支払っている(支払率60%以上である場合に限る)」場合、休業手当全体の助成率を特例的に10/10(100%)とする。(会社負担0%、0円)
 教育訓練を行わせた場合も同様に支給する。

【出所・関連情報】
新型コロナウイルス感染症に係る雇用調整助成金の特例措置の更なる拡大について(4/25)
厚生労働省HP 雇用調整助成金
休業要請に応じた中小、手当全額を国が補助 雇用助成金(2020.4.25日経新聞)
厚労省/雇用調整助成金「会社負担6%」に軽減、制度活用推進(2020.4.27 流通ニュース)

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