新型コロナ感染症から住民のいのちと健康を守る最前線で働く保健師、看護師の声を聞くことが難しい中、その実態を示す記事が自治労連大阪のホームページに掲載されていました。
Asu-netのブログでも、この記事に関連した連続エッセイ「第40回 保健所機能の大きな後退を招いた政府の地域保健政策-新型コロナウィルスとの闘い(2)」へのアクセス数が際立っています。最前線現場の状況を伝える貴重な記事です。
【大阪府職労発】府民のいのちと健康を守る最前線から-保健師と看護師の勤務実態 (5/22)
(自治労連大阪ホームページ)
新型コロナウイルス感染症対策に追われる保健所や病院など、最前線の職場では、職員が昼夜分かたず十分な休みも取れない中、必死に奮闘しています。最前線で働く現場の組合員の声です。ぜひ読んでください。
「休んでいる暇はない」保健所感染症チームのリーダー(保健師)
感染症チームをまとめるリーダーとして、所内からの応援も含めて10人のメンバーをまとめています。ベテラン・中堅の保健師が少ないため、チームの大半が採用5年目未満の保健師ということもあり、日々コロナ対策に追われる中、全体を把握・フォローする立場でもあり、休んでいる暇はありませんが、チームメンバーを守り、保健師としての役割を発揮するため懸命に頑張っています。
保健所では、新たな陽性者や濃厚接触者への対応だけでなく、自宅やホテルで療養している人にも毎日電話連絡し、状態を聞き取る中で症状の悪化がないか些細な兆候も見逃さないよう細やかな対応をしています。状態が急変した場合は保健師が患者に付き添って入院へとつなげていくこともあります。また、結核など他の感染症対策もやっています。
コロナ対応では、健康医療部には他部局からの応援も含めて20を超える班やチームが作られ、多岐に渡る対応をしていますが、そのたくさんの班・チームからのメールや電話を各保健所の感染症チームが限られた人数で全て対応しなければなりません。
保健師を増やし育成する体制を
毎日9時前に出勤し、ふと気づくと13時か14時という日々が続きます。毎日18時(以前は21時以降)の報道発表に間に合わせるための報告書や資料づくりにも追われます。
府民のみなさんからの電話対応は24時間コールセンター(民間委託)が受け付けていますが、コールセンターで対応できない案件は保健所へ電話がまわってきます。保健所に配置されている携帯電話だけでは対応できないため、職員個人の携帯電話も使って対応しています。ただでさえ、休日もなく連日夜遅くまで働いているのに、自宅に帰ってからも気を休めることはできません。ホテル療養者の容態変化があったときも、保健師に連絡が入り、フォローしなければなりません。
そんな業務が続き、4月の時間外勤務は170時間を超えています。若い職員も同じように残業しているし、土日のどちらかしか休めない状態が続いているので、できるだけ若い職員を休ませたいと思います。
どんなに忙しい中であっても、命にかかわる仕事なので、言い訳はできないので「報告、連絡、相談」を徹底し、ミスが起こらないように慎重な対応も心がけています。
保健所や保健師だけでなく、行政職員も減らし、その結果、保健師の業務負担増になったり、業務分担制を縦割りにしたり、計画的な採用・育成を行ってこなかった弊害が噴出しています。保健師の仕事は一朝一夕にできるものではありません。時間をかけて育成することが大切です。
「感染の不安を感じながら」コロナ病棟で働くベテラン看護師
感染者が増え続けるもと、大阪府からの要請にもとづき、コロナウイルス感染患者の受け入れを広げています。コロナ病棟で勤務しはじめた当初は、状態が落ち着いている患者さんばかりで、報道されているような急激な状態悪化が本当なのかとさえ思っていました。
しかし、3月下旬より状態の悪化した患者さんの入院が相次ぎ、入院後数日、あるいは数時間で人工呼吸器が必要となる患者さんも増えてきました。感染の危険があるため、なるべく接触を避けるようにと言われていましたが、状態の悪い患者さんに対する排泄や食事、清潔の介助など濃厚に接触することが増えてきました。介助中はいつも必死なので、感染の恐怖を感じる余裕すらありませんでした。しかし、勤務を終えた後には「不必要な接触はなかったか」「自分が感染源になってしまうのではないか」という不安で頭がいっぱいになります。少しでも自分の体調がすぐれないときは「感染したのではないか」という恐怖に陥り、「家族や同僚、病院に迷惑がかかる」と不安を抱きながら過ごす日々が続いています。
病院にある人工呼吸器の台数にも限りがあるため、状態悪化すると転院しなければならない患者さんも増え、毎日ピリピリした空気の中で勤務しています。こうした中での精神的な疲労はとても大きく、勤務が終わり帰宅すると疲れがどっと湧き出てきて、動けなくなる日もあります。看護師数にも限りがあり、4月は夜勤回数も10回になりました。
患者さんを前にしているとコロナウイルスの恐怖はあまり感じませんが、一歩離れて冷静になると押し寄せる不安と恐怖に向き合わなければならない日々が続いています。
「身体と心を休めたい」緊急保健師アンケートから
大阪府職員労働組合では、保健所で働く保健師を対象に「緊急保健師アンケート」を行いました。短期間の集約でしたが75人からの回答がありました。一部を紹介します。
新型コロナウイルス感染業務に携わって「あなたが強く希望することは?」の質問に対しては、約67%が「身体と頭を完全に休める時間(休暇)の確保」と答え、次いで「電話対応等のため自宅待機時の手当(オンコール手当)の支給」約62%、「緊急に保健師(臨時的任用を含む)を増やしてほしい」58%と続いています。
また、半数以上が「管理職のマネジメント」と答え、約4割が「退庁時間が22時以降となる場合のタクシー利用」と答えるなど、過酷な職場実態が伝わってくる結果となっています。
また、半数以上の保健師が現場と本庁との意思疎通、連携に問題を感じており、「報告事項が増えたり、様式が短期間で変わったり、類似・重複する報告をする必要があり、現場の負担が大きくなっている」「トップダウンで指示が下りてきて、現場の意見が伝わっていない(意見交換の場がない)」「本庁も保健師も人が足りていない」などの声が寄せられています。
その結果として「コロナ以外の患者や業務が置き去りにされつつある」「府民と病院や救急隊との間で動きが取れなくなり苦しい状況となっている」「事務作業に追われ、患者や相談対応など本来業務をする時間が減る」「昼休憩すら確保できていない」「手続きや流れに関する混乱があるため、心理的負荷が増し、職員が疲弊している」などの切実な実態も寄せられています。