第46回 韓国政府の全教組「非合法化」処分を違法とした大法院判決(下)

目まぐるしく変転した裁判所の判断

 この法外労組通報処分をめぐって、全教組と政府の間で数多くの裁判が行われることになりました。この過程で、裁判所の判断は、処分を認めるものと、違法として取り消すものに分かれました。

 全教組が提起した効力停止仮処分申請については、ソウル行政法院(2013年11月13日)、ソウル高等法院(同12月26日)は申請を認めましたが、大法院では逆転敗訴しました(2015年6月)。本案訴訟では、ソウル行政法院(2014年6月19日)、ソウル高等法院(2016年1月21日)で訴えが棄却され、全教組が敗訴しました。

この表は、2020年2月9日付けハンギョレ「朴槿恵政府ファクス1枚が作った全教組、法外労組、最高裁判断は?」の記事中の表を基に、20.9.3大法院判決までの経過を筆者が加筆したものです。

 こうした本案訴訟の判断を反映して、引き続いて行われた仮処分申請でも、ソウル行政法院(2014年6月30日)で全教組は敗訴しました。ただ、ソウル高等法院(2014年9月19日)は、その判断を覆し、全教組の仮処分申請を認容しました。しかし、大法院は、これを逆転して破棄差戻(2015年6月3日)判決を下したのです。
 そして、ソウル高等法院から、教員労組法2条の違憲性をめぐる憲法裁判所の判断を求めることになりました。しかし、憲法裁判所の決定は、解雇者を組合員に含めないとする同条が合憲であるという不当なものでした(2015年5月28日)。

 このように裁判所の判断が2014年6月頃を境に全教組敗訴に傾いて大きく変わりました。その背景には、朴槿恵政府からの裁判所への圧力の強まりと、それに呼応する司法府内部の一部判事たちによる「司法壟断」という驚くべき事実がありました。その真相が明らかになったのは、朴大統領弾劾後のことでした。

 その後、2016年に朴槿恵大統領の「国政壟断」問題が大きな政治問題となりました。市民運動、労働運動からだけでなく、インターネット、若い学生たちからも大統領の弾劾要求が噴出しました。2016年11月からソウルだけでなく、全国各地で100万人規模の大集会(ローソク集会)が繰り返して行われるようになったのです。そして、12月9日には、国会で朴槿恵大統領弾劾案が可決されることになりました。

 本案訴訟は、2016年1月のソウル高等法院での敗訴後、2月1日に全教組が大法院に上告していました。しかし、朴大統領の弾劾をめぐる動向の中で、ヤン・スンテ大法院長が、司法介入を強めていた政府(大統領府)と密接に連絡して、重大裁判(徴用工事件、全教組事件など)に不当に介入をしていたのではないかという疑惑(いわゆる「司法壟断」問題)が浮上したのです。そして、2017年3月10日、憲法裁判所が、朴槿恵大統領の弾劾認容を決定しました。その後、3月24日から「大法院、司法壟断関連真相調査委員会」の調査が始まったのです。

 真相調査の結果、朴槿恵政権の中枢(キム・キチュン秘書室長など)が、全教組裁判の日程や集会を細かく調べて全教組攻撃を執拗に企図していたことが判明しました。また、裁判所事務部所属の判事が、労働部が作成すべき書面を代わりに作成し、大統領府に送って共有し、その内容が労働部側の理由書にそっくりそのまま引用されたということも明らかになりました。大統領府が主導し、司法府(裁判所)、国家情報院ほか多くの行政機関など、まさに国家機関を総動員して、最初から最後まで緻密に企画して完成させた労組(=全教組)破壊行為だったことが浮かび上ってきたのです。

2020年9月4日毎日労働News 全教組法外労組闘争の歴史は、国家暴力の歴史 MB(李明博)政府から「着実に」準備、朴槿恵政府で敢行した「工作」、前掲2020年2月9日付けハンギョレ「朴槿恵政府ファクス1枚が作った全教組、法外労組、最高裁判断は?」エッセイ45回のニュースタッパ動画など参照。

2020.5.20 大法院全員合議体の公開弁論

 上記の事情もあって、大法院での本案訴訟上告審の審理は遅れに遅れることになりました。ようやく、2019年12月9日、大法院の審理は全員合議体に回付されることが決まり、2019年12月19日、全員合議体は、全教組法外労組通報処分取り消し訴訟の上告審で初めての審理を行いました。そして、2020年5月20日、大法院は上告審として公開弁論を行うことになり、原告・被告の代理人が意見を述べ、労働法専攻のカン・ソンテ(姜成泰)漢陽大学教授、イ・スンギル亜州大学教授が参考人として意見陳述を行いました。公開弁論は、4時間を超える長時間、Youtubeでライブ中継されました。パワーポイントが映写されるなど相互の意見が分かり易くなる工夫がされ、大法官(判事)が参考人らとの間で質疑をするなど、市民に開かれた裁判にするための変化に驚かされました。日本の最高裁判所も、こうしたネットでのライブ中継をすれば、低調な最高裁判所裁判官国民審査でも直接に判断できる材料ができ、折角の国民審査を民主的に改善できるのにと思いました。

<説得力のあるカン・ソンテ(姜成泰)参考人の意見>

カン・ソンテ(姜成泰)参考人 漢陽大学法学専門大学院教授

 カン·ソンテ参考人は、「全教組への法外労組の通報は、適法か?」という質問について、次のような指摘を行いました。

 現行制度では、労働組合設立届出証の具備は、単に労働組合が実体的要件を備えているという事実についての行政官庁の確認ではなく、法内の労組独自の要件となっている。労働者団体が労働組合の実体的要件をすべて備えた場合でも設立申告証の交付を受けられないと法的には適法な労働組合でない。 労働組合は行政官庁から設立申告証の交付を受けた場合にのみ設立申告書が受理された時にさかのぼって設立されたものとみなされる。
 設立申告書の交付を受け、法内の労組と見なされていた勤労者団体の地位を否定するには、労働組合法等により以前の設立申告書の交付を取り消すか、または法内の労組の地位を喪失させる別途の措置が必要であり、このような措置は少なくとも設立申告手続き以上でなければならない。
 法外労組通報制度を定める施行令第9条第2項等は、労働3権の行使を全面的、包括的に制限するにもかかわらず、法の委任なしに行政官庁に広範囲の裁量を与えたものであり、無効である。法外労組の通知により、法内労組は労働3権の行使のために享受してきた核心的な権利と諸利益を失う。
 設立申告手続きは労働組合の設立申告として始まり、設立申告書と規約を通じて、書類の具備と欠格要件を中心に3日間審査し、行政官庁は(補完要求)返上または設立申告証を交付する。主要事項は労働組合法で直接補完事項のみ施行令11条がだ定める。 法外労組通報のための審査は、審査の開始可否、審査の対象と方法と期間などに関して広範囲な裁量を行政官庁に委ねている。しかし、労働組合法には規定がなく、施行令でのみ規定している。
 法外労組の通報により侵害される労働3権は広く明白である反面、得られる公益ははっきりしないか、他の制度により代替または補充され得る。
 法外労組の通報処分は裁量行為かについて、現状では、審査の開始可否をはじめ、審査の対象と所在及び期間がすべて行政官庁の裁量に委ねられている。しかし、労働組合法第2条第4号の但書の各目に該当するか特に自主性の不足が法内の労組の地位を否定する程度であるかについては、行政官庁の実質的判断が必要である
 教員でない者の加入が許可された場合でも、労働組合法第2条第4号ラ目について別途の自主性審査が必要である。学説では、但書に該当すると直ちに労働組合の資格が失われるという形式説(別途の要件説)や但書に該当するとしても自主性を侵害する可能性がなければ、労働組合の資格には影響がないとの実質説(例示説)が対立している。
 法外労組通知のための労働組合審査は、設立申告段階の審査とは違って、社会的実体がある労働組合に対するものなので、自主性を備えているかどうかなどを具体的かつ実質的に審査でき、またそうしなければならない。

 さらに、カン・ソンテ参考人は、いくつか注目すべき点を付言しています。

 労働組合の資格に対する「行政官庁」の審査制度は法例を探すことは難しく、ほとんどの国で労働組合に対する資格審査は必要な場合、司法機関が担当している。日本も、独立性のある労働委員会が審査している。失業者が加入したことを理由に、その者の組合員性を否定したり、労働組合の資格を否定する外国法例も見当たらない。
 同僚だった組合員を単に使用者から解雇されたという理由で労働組合から排除するよう強制する法例は、現在はもちろん歴史的にも探すことが難しい。
 この事件の関連条項は国際労働基準に反し、韓国政府もこれを改善しようとしているが、立法前でも司法府は不正義を矯正でき、またそうしてきた経験がある。

2020.9.3大法院全員合議体判決の概要

 大法院は、こうした公開弁論を経て、2020年9月3日、処分取り消しの判決を下したのです。大法院全員合議体(主審 ノ・テオク大法官)は多数で、結論として1・2審の全教組敗訴の判決を破棄し、全教組・法外労組の通報処分取消訴訟の上告審で、法外処分は無効であるとし、全教組敗訴の原審の判決を破棄し、事件をソウル高等法院に差し戻しました。

 大法院判決は、理由として、まず、法外労組通報処分の根拠になった「労働組合及び労働関係調整法(労組法)施行令」9条2項が、法律の委任なしに行政処分を可能にしたもので、憲法が保障した労働3権を侵害すると判断しました。

 <法外労組通報は労働3権の重大な侵害>

 つまり、「法外労組の通報は、形式的には労働組合法による特別な保護だけを取り除くように見えるが、実質的には憲法が保障する労働3権を本質的に制約する結果を招く」とし、「法外労組」の通報を受ければ、「労組という名称を使うことができないなど、労組としての活動に莫大な支障をきたすことになり、これは労働3権の実質的な行使に対する重大な侵害になるため、厳格に考える必要があるとしました。

 <法律の留保原則に違反>

 そして、「適法な手続きを経て設立された労働組合に対する法外労組通報は、まだ法律上労働組合ではない団体に対する設立申告書の差し戻しに比べ、その侵入性がより大きいため、強力な基本権関連性を持つ法外労組通報に関しては、法律に明確な根拠がなければならない」としました。
 しかし、「現行の労組法は制定当時から設立申告の差し戻しについては規定しながらも、より多くの利益を侵害する法外労組通報については何の規定もなく、施行令で規定するよう法律が委任しているわけでもない」と指摘し、法外労組通報制度化の過程を見れば、明らかな法律の根拠がないと判示しました。

 むしろ、「行政官庁が法外労組通報をすることで事実上労組の地位を剥奪したことは労働組合解散命令制度と事実上同じだ」「むしろ〔解散命令制度にあった〕労働委員会の議決手続きがなく行政官庁の恣意が介入する余地が大きくなっただけ」と指摘しています。

 要するに、大法院は、国民の権利を制限したり義務を課す場合には、必ず国会議決を経た法律によらなければならないという「法律留保原則」に、法外労組通報制度は違反し、それに基づく政府の処分は違法であることを明快に判示したのです。

 <労組法2条4号ラ目の解釈>

 また、補足意見として、キム・ジェヒョン大法官は、労組法2条4号ラ目が解雇組合員資格維持まで禁止するのではないという解釈を示しました。つまり、全教組が組合と関係のない第3者を組合員としたのではなく、「ただ組合員として活動して解職された教員の組合員資格を維持するようにしているだけ」であり、それを理由に労働組合の法的地位まで剥奪するべきではないという意見を述べました。

 <世界の普遍的な基準>

 また、アン・チョルサン大法官は、世界の普遍的な基準は、解雇教員の教員労働組合への加入を認めており、解雇教員を組合員として受け入れているという事情だけで、全教組の労働組合としての法的地位そのものを剥奪することはできないと述べました。

少数の反対意見

 一方、反対意見を述べたイ・ギテク、イ・ドンウォン大法官は、法令(労組法施行令9条2項)の規定は一義的かつ明確なので、他の解釈の余地がないとして、法外労組通報処分は違法でないとしました。

大法院判決への反響

 この大法院判決について、9月4日、全教組は声明書を発表しました(このエッセイの末尾に【参考資料】として試訳しました)。また、民主労総など全教組の闘いを支援してきた労働組合、労働関連団体も、歓迎の声を表明しています。国家人権委員会も委員長の歓迎声明を発表し、民弁などの法律家団体も歓迎の論評を出しています。

 政府・雇用労働部は、翌日、9月4日、法外労組通報処分を取り消しました。これは、9月3日、大法院が、本案訴訟での全員合議体の判決とは別に、特別3部で、法外労組通報処分の効力停止仮処分申請を却下していましたので、雇用労働部の決定は、実際的な意味をもっています。そして、教育部は、団体交渉と労組専従者、職権免職者の復職など、今後の措置案を用意し推進する計画であると表明したということです。全教組が、約6年10カ月ぶりに、完全に労組としての地位を回復することになりそうです。

 今後、より大きな注目を浴びることになるのは、ILO結社の自由条約などの核心条約の批准問題です。韓国は、ILOの基本条約の批准をしておらず、その批准が長く課題として指摘されてきました。とくに、公務員労組と教員労組を法外労組としてきた保守政権政府自身による労組破壊行為など、「労働積弊」の解消が争点となりました。そして、2017年の大統領選挙で文在寅候補は、公務員労組、教員労組の地位回復と、ILO条約批准などを公約に掲げて当選しました。しかし、文在寅大統領は、5年任期半ばを越えても教員労組合法化の公約を果たさないままでした。全教組は「文在寅大統領は公約を守れ」と、大統領府前で抗議活動を続けてきました。

 文在寅大統領としては自らの措置で公約実現をするのではなく、全教組を非合法な地位に放置したまま、司法府に丸投げしたのです。今回の判決は大統領にとっては、きわめて不面目な結果となってしまいました。全教組が合法化されても、大統領に期待していた労働側の政府不信は解消されないままとなりました。

 ILO核心条約批准は、ILOからだけでなく、EUと韓国政府とのFTA協定での条件とされています。政府としては条約批准のために国会での関連法改正を待つという立場ですが、保守野党の頑強な抵抗に遭っています。労働側は、「先批准、後改正」の主張をしており、この点でも労働側の政府不信は強く、労・政の対立点となっています。

若干の感想

(1)今回の大法院判決は、労働法の視点からは労働組合が自由に構成員を選ぶ「結社の自由」を確認した点で当然の結論です。全教組が、政府の不当な介入、過酷な弾圧に屈することなく、その主張を貫いたことに心からの敬意を感じます。

(2)私にとって、韓国との交流は1994年に始まりました。エッセイ(上)で触れたように、当時「非合法」とされていた全教組の組合員教師との出会いに強烈な印象を受けました。団結権は、使用者だけでなく、政府からも妨害を受ける点で、日本も同様の面がありますが、日本以上に韓国での厳しさを知りました。
 2000年、韓国から突然に電話があり、講演を頼まれました。創立されたばかりの「非正規労働センター」の記念シンポジウムで日本の派遣労働について話をしてほしいということでした。センター長は、全教組で解職された経験をもつ、若いパク・スンフップ(朴昇洽)さんでした。苦しい裁判闘争を経験し勝利しましたが、解職中に生活のために経営した学習塾で得た利益を、非正規労働センター創設に投じたとのことでした。長い裁判中に支援してくれた労働者のために使ったということです。 〔詳しくは、エッセイ第14回 「労働者分断」を乗り越えてきた韓国労働運動(下)参照
 全教組は、今回の法外労組扱いを含めて、何度も政府からの迫害に遭いました。しかし、それに屈しない組合員たちの志の高さを改めて感じます。

(3)カン・ソンテ教授の参考人意見では、解雇された労働者がいても、失業者が加入していても労働組合として認めるという点で、日本の例も挙げられていました。独裁政権では、労働組合は、企業別の従業員に限るという企業別主義が貫かれていました。労働組合の組合員を同じ使用者に所属する従業員に限るというのは、カン・ソンテ教授が指摘するように世界にも例がない、時代錯誤の法制度だと思います。
 しかし、日本では、労働組合の組合員を従業員に限るという法制度はありませんが、実態的には、依然として従業員だけの企業別組織、さらには非正規雇用労働者を組合に入れない正社員組織が多いと思います。韓国では、実態的には、企業を超えた産業別労働組合への転換が意識的にすすめられています。企業別組織では強大な資本や当局と対抗できないこと、増加する非正規雇用労働者を代表できないというのがその理由だと思います。
 かつて日本でも、公社(公共企業体)では被解雇職員を含む組織を組合員と認めない法制度があり、今回の全教組と同様な問題がILOにまで持ち込まれ、一定の改善がされたことがあります。しかし、現在でも、公務員関係では、依然として、所属自治体や機関別の「職員団体」に閉じ込め、「結社の自由」という点から問題となる法制度が残っていると思います。

(4)この4月からの「会計年度任用制度」の導入にともない、いわゆる「非正規公務員」では集団的労働関係面で、以前は特別職として労働組合法適用であったものが逆に、その適用がなくなり、大きく後退していることがILOからも問題指摘されています。 この点は、まだ大きな注目を集めているとは言えませんが、労働者の権利を考えるときに、自らの労働条件を改善するために労働3権がきわめて重要であることは世界の法的常識です。
 「一人の痛みは全体の痛み」という言葉があります。この問題をマイナーな問題と見過ごすのでなく、全教組の経験を参考に「権利」の問題として、国内外に問題点を訴えていくことが重要だと思いました。

ILO, Application of lnternational Labour Standards 2020: Report of the Conlrnittee of Experts on the Application of Conventions and Recommendations,2020,pp.158-159. これに関連して、早津裕貴・金沢大学准教授は、「これまで労働基本権を全面的に享受 してきた、旧地方公務員法3条3項3号 に基づ く特別職非常勤職員との関係では、会計年度任用職員制度の導入に伴い、その多くが労働基本権制約に服する一般職職員に移行されることが想定されてお り、 戦後直後以来の労働基本権「剥奪」という問題までもが生じている」と指摘しています(早津裕貴「『非正規』公務員をめぐる『法的』課題」季刊労働者の権利335号73頁)

【参考資料】
[2020.9.4 全教組(全国教職員労働組合)声明書]

もはや法外労組なんてない!
「労組破壊-国家暴力を謝罪し、解雇者の職場復職-労働3権を保障せよ!」
-法外労組取消訴訟、大法院の判決結果に寄せて-
– 労働部は労組でないという通報を取り消し、教育部はいわゆる後続措置を取り消すべきだ!
-政府は労組破壊=国家暴力への謝罪と責任者処罰、教員-公務員の労働3権を保障すべきだ!

常識的な判決、本当に長くかかった!

2020.9.3. 全教組法外労組取消大法院の判決は、全教組が主張してきた内容であり、大韓民国憲法と国際社会が基準としている内容を、大法院が明確に確認したものと言えるだろう。

核心は、「法外労組通報制度は、国会で1987年に廃止した労働組合解散命令制度と実質的に違いがなく、法律の具体的かつ明示的な委任もなく、憲法が保障する労働3権を本質的に制約する結果を招く」という点で違法であり、「全教組に対する法外労組通報も無効」という判断だ。

こうした大法院の判決は、全教組の法外労組通報の違憲・違法性に対する確認であり、設立された労働組合に対する行政府処(使用者)による「法外労組」というものは存在しないことを明確にしたものである。

全教組が弾圧にひざまずいていたらなかった判決!
全教組と共にした数多くの労働者、民主市民の闘争の結果!


全教組に「解雇者を追い出せ」という、李明博、朴槿惠政権の不当・違法な弾圧にもし私たちがひざまずいたなら、今日のような労働組合の自主性を守ることができ、教員の労働3権を保障する憲法を確認する判決はなかっただろう。

全教組は民主労組運動の原則によって不当、違法な行政府の命令を拒否し、粘り強い7年間の熾烈な闘争で民主労組、全教組を死守した。今回の大法院判決は、労組破壊=国家暴力に対抗する全教組闘争の結果であり、「良いことが良いのではなく、正しいことが良いことだ」という全教組の真の教育精神の結果である。

何よりも全教組とともに闘ってきた、韓国社会の教育民主化・社会民主化を切望してきた数多くの労働社会市民団体、民主市民がいなかったら、私たちの闘争は容易ではなかったに違いないということを表明し、心から感謝の言葉を伝えたい。

裁判所の判決の後ろに隠れて労働積弊継承してきた文在寅政府、
遅れたのだから速やかに全教組と公務員労組の解雇者たち、原職復職させなければならない!

実に長い闘いだった。全教組、法外労組に李明博、朴槿惠政権による労組破壊=国家暴力だったことが、国政壟断と司法壟断の合作品だったことが明白に明らかになった状況で、朴槿恵弾劾以降、始まった自称ろうそく政府においても、法外労組弾圧と闘わなければならないことには深い怒りを伴い、実に残忍な苦痛に耐えなければならないことであった。

大法院判決で、教員・公務員に対する労働基本権保障という時代精神、憲法精神が確認された。あまりにも遅くなったが、今からでも文在寅政府は、全教組に対する労組ではないという通報を直ちに取り消さなければならず、法外労組弾圧による全ての被害について謝罪し、原状回復措置に乗り出さなければならない。労組活動を理由に解雇された34人に対する即時の原職復職措置が真っ先に実行されなければならない。これ以上解雇者の原職復職を延ばす理由も名分もない。文在寅政府がこの常識的な措置すら先延ばしするならば、私たちはまた再び街頭で緊迫した闘いを繰り広げるしかないだろう。

また、法外労組弾圧で解雇された34人のほかにも、私立学校の民主化、教育改革、社会改革、民主平和統一運動など、全教組の真の教育精神を具現するために闘って解雇された全教組組合員に対しても、前向きな復職措置が共に行われるべきだろう。全教組のすべての解雇者に対する復職措置は、労組活動を口実にした不当解雇の弾圧を断ち切ることであり、これもまた決して先送りできないことである。

そして、全教組のような労組破壊の犠牲者である全国公務員労働組合に対しても前向きな措置を共に取ることを求める。前政権は、公務員労組にも全教組と同様に解雇者の排除を強要し、労組活動を理由に大量の公務員を解雇した。その苦痛の時代はなんと16年にもなる。文在寅政府は、何度も約束した公務員労組の解雇者たちに対する原職への復職など、原状回復措置に直ちに乗り出すべきである。

「労働改悪を中断し、教員・公務員の労働3権を保障すべきだ!」

何より今回の大法院判決の精神は、教員(-公務員)にも労働三権が保障されなければならないという憲法の確認である。このため、全教組の法外労組通報の違法性、無効を確認することにとどまらず、教員・公務員の労働基本権を制約する教員労組法の違憲性を正すことに進まなければならない。

時代錯誤的に文在寅政府と国会はILOの条約の批准を口実に教員と公務員はもとより、一般労組の労働基本権を制約する法案を発議し、法改悪を推進している。これは時代精神、憲法精神に反するものであることを明確にし、私たちは全教組の法外労組弾圧を全身で粉砕してきたように、労働改悪を防ぎ、すべての労働者の労働基本権、政治基本権を確保するための闘いにも退くことなく共に取り組むことを表明する。

2020年9月4日
全国教職員労働組合

この記事を書いた人