「雇用によらない働き方」関連情報(2021年1月~)(2021.6.4更新)

 「雇用によらない働き方」と呼ばれるフリーランス、名ばかり個人事業主をめぐる問題は、Asu-netの2019年「つどい」で取上げました。その後、コロナ禍で「雇用によらない働き方」が、日本に限らず世界的に、仕事を失い、収入だけでなく、社会保障面でも脆弱である働き方であることを浮き彫りになりました。ILO、OECDが、「雇用によらない働き方」に関して大きな問題があることを強調しています。とくに、EUは、2017年11月、ヨーテボリ(スウェーデン)で開催された「社会サミット」「社会権の柱」を確認しましたが、そこでは、社会的格差の広がりのなかで雇用脆弱層を中心にした多くの社会的権利が重視が確認され、典型(標準)労働者だけでなく、非標準労働者(non-standard worker)、自営業労働者(self-employed)の社会的保護も挙げられました。
 コロナ禍(covid-19)を経て、2021年5月、ポルトガルで開かれた「社会サミット」では、この社会権の実現が大きなテーマになりました。2017年以降、コロナ禍の中で非標準労働者、とくに移動制限・都市封鎖の中で社会を支えた食事配達員など、プラットフォームを通じて働く労働者の保護の課題が注目されました。そして、プラットフォーム労働者自身の運動を背景に、労働組合の支援を得て闘われた訴訟で、欧州各国の裁判所が、プラットフォーム労働者の「労働者性」を認める判決を相次いで下しました。こうした動向を背景に、この5月、スペインが食事配達員の労働者性を認める法令を国レベルで初めて定めました。韓国も、個人請負労働者への労働・社会保障法の適用を拡大する議論が高まり、雇用保険法の適用拡大が進んでいます。
 しかし、日本では政府・経営側から、「雇用によらない働き方」の就労者を、従来の「規制緩和」の延長として、低劣な労働条件を前提に十分な保護なしに利用する意図が示され、国際的な権利拡大とは程遠い状況のままです。欧米・韓国とは異なり働く側の動きや取り組みは小さな流れにとどまっています。
 このページでは、日本の動向を考える前提として国外(欧米・韓国など)の新たな関連情報を集めます。世界の動きは速く、活発です。継続して更新していくつもりです。
 なお、既存の関連情報については、以下のボタンをクリックして下さい。(2021.6.4 swakita)

フリーランス・個人請負 政府・自治体の関連情報

関連ニュース


労災保険の特別加入対象が拡大(厚労省2021/04/01) +その他のNews ここをクリック

 ◇令和3年4月1日から労災保険の「特別加入」の対象が広がります(厚労省)
 令和3年4月1日から、以下の方について新たに特別加入制度の対象となります。
 ・ 芸能関係作業従事者 ・ アニメーション制作作業従事者 ・ 柔道整復師 ・ 創業支援等措置に基づき事業を行う方
 ◇政府 「フリーランス」保護でガイドライン 独禁法適用を明記(NHK2021.3.26)
 「政府は、「フリーランス」として働く人を保護するためのガイドラインを公表し、仕事を発注する事業者が報酬の支払いを遅らせたり一方的に仕事を取り消したりすることは、独占禁止法上の優越的な地位の乱用にあたると明記しました。
 企業などの組織に属さず個人で仕事を請け負う「フリーランス」として働く人が増える中、公正取引委員会や厚生労働省などはフリーランスの保護のためのガイドラインを公表しました。」
 ◇政府・通達 芸能従事者の就業中の事故防止対策等の徹底について(2021.3.26)
 ◇「くらしのマーケット」がある登録業者を突然掲載停止に。掲載サイトと登録業者は本当に「平等」か?(Harbor Business Online)
  業界ガリバーのみんなのマーケット社が1月19日、登録業者2名からツイッターの「みかじめ料投稿」をきっかけとしたサイト利用停止は不当であるとして、同サイトの利用地位の確認を求めて訴えられた
 ◇溝上憲文「全治3カ月でも休業補償なし。ウーバー配達員だけではないフリーランスと労災問題」(Business Insider2021年5月14日)

社員の個人事業主化の動き     ここをクリック

労働組合・関連団体


関連文献・サイト

文献(日本語)・論説(2021.1~) ここをクリックして下さい

浦田誠「食事配達員の国際労働運動と労働者性をめぐる海外の判例動向(後編)」季刊労働者の権利340号(2021年4月)
【解説】経団連や政府が「副業」や「フリーランス」などの「新しい働き方」をめちゃくちゃおススメしてくるのはなぜか?それにはちゃんと理由があります。全労連雇用労働法制局長 伊藤 圭一
◇月刊全労連 2021年4月号(通巻290号)目次 Gekkan ZENROREN 4 No.290
 雇用類似の働き方は本当に柔軟なのか
 フリーランス・プラットフォーム労働をめぐる問題点と権利運動の課題 龍谷大学名誉教授 脇田 滋
 政府・財界推しの「新しい働き方」にひそむワナ 全労連雇用労働法制局長 伊藤圭一
 高くて厚い「壁」を揺さぶる コロナ禍での保護策とガイドラインを案めぐる要求 MIC事務局長 北 健一
 雇用類似の働き方の実態と要求、労働組合の対応と政策 映演労連書記長 梯 俊明
 フリーランス(個人事業主)の組織化と運動の展開 建交労書記長 廣瀬 肇
 ある日突然無報酬になってしまう “雇用類似の働き方” 全労連・全国一般労働組合書記長 林 博義
 偽装業務委託の広がり 無法化する働かせ方の実態 首都圏青年ユニオン委員長 原田仁希
今野晴貴_フリーランスを「見捨てる」国 新ガイドライン案の何が問題なのか?(Yahoo News 2021.3.7)
日本社会保障法学会編『社会保障法第36号 働き方の多様化と社会保障法/東アジアの最低生活保障』(法律文化社、2021年3月)
日本労働研究・研修機構『労働政策研究報告書 No.207 雇用類似の働き方に関する諸外国の労働政策の動向 ―独・仏・英・米調査から―』(2021年2月)PDF
脇田滋「コロナ禍で浮き彫りになったフリーランス保護の必要性」労働法律旬報No.1975+76(2021年1月合併号)
沼田雅之「コロナ禍で明らかになった社会保障の課題―フリーランス等の個人事業主の「失業」を題材に」労働法律旬報No.1975+76(2021年1月合併号)

クラウドワークの進展と社会法の近未来 浜村彰・石田眞・毛塚勝利編著 発行:労働開発研究会、2021年3月 4300円

  • 第1部 総論−クラウドワークをめぐる社会法上の課題
    第1章 クラウドワークの労働法学上の検討課題
  • 第2章 クラウドワークの歴史的位相
  • 第3章 日本のUber Eatsをめぐる労働法上の課題
  • 第4章 日本のクラウドソーシングの現状と労働法上の課題
  • 第2部 クラウドワークの比較法研究:各国の最新の動向
    第5章 ドイツにおけるクラウドワークをめぐる議論動向
  • 第6章 フランスにおけるクラウドワークについての法的状況
  • 第7章 イギリスにおけるクラウドワークとそれに係る法的課題
  • 第8章 2020年代を迎えたアメリカにおけるプラットフォーム経済の現在
  • 第9章 プラットフォーム就労に関するEUの政策動向
  • 第10章 ILOのHuman Centered Approach(人間中心アプローチ)とプラットフォームワーク
  • 第3部 日本のクラウドワークの実情調査
    第11章 プラットフォームのヒアリング調査
  • 第12章 クラウドワーカーのヒアリング調査
  • 第13章 クラウドワーカーのアンケート調査
  • 第4部 クラウドワーカーにかかる中間的総括
    第14章 日本におけるクラウドワークの現状と法的課題
  • 第15章 個人就業者をめぐる議論に必要な視野と視座とは
  • 第16章 「雇用によらない働き方」と労働者性問題を考える
  • 第17章 「曖昧な雇用関係」をめぐる労働法上の解釈論的・政策論的課題

女性労働研究 第65号 コロナ禍のフリーランス 女性労働問題研究会(編集) 発行 すいれん舎 2200円(税込)2021年3月30日

  • 巻頭 コロナ禍の女性労働とフリーランスの労働基本権  竹信三恵子
  • 特集 新型コロナと女性フリーランス〈雇われない働き方〉
  • コロナ禍でのメディア関連フリーランスの実態―子どもをもつフリーランスを中心に― 杉村和美
  • コロナ禍でのフリーランス俳優の実態  森崎めぐみ
  • 生命保険業における営業職の雇用関係の形成―利害関係者の働きかけに注目して―  金井郁
  • Topics 新型コロナ禍における飲食店非正規労働者の労働運動の展開とその基礎  栗原耕平
  • 書評 脇田滋編『ディスガイズド・エンプロイメント』  北健一

 基礎経済科学研究所編『時代はさらに資本論』 昭和堂 2021年5月

第7章 「雇用によらない働き方」――その実態と雇用社会の限界・未来社会(髙田好章)
 はじめに
 1 「雇用によらない働き方」
 2 新たな政策-多様化する働き方と「雇用によらない働き方」
 3 フリーランス・個人請負で働く人の権利を守る 
 4 雇用社会の限界と未来社会
 おわりに


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ライダー。 Cgil CislUilとJustEatの間の合意
https://www.nidil.cgil.it/rider-accordo-tra-cgil-cisl-uil-e-just-eat/

2021年3月29日 NIdil_RIDER. Accordo tra Cgil Cisl Uil e Just Eat

NIdiLCgilプレスオフィスのプレスリリース2021年3月29日

CGIL CISLUILとの間の合意 最初の重要なステップ
 ローマ、2021年3月29日、Assodeliveryと食品配送会社でさえ、今では組合と一緒にテーブルに座っています。CGIL・CISL・UILとJust Eat〔配達プラットフォーム企業〕の間で本日署名された合意は、重要な一里塚(traguardo)を表しています。物流業全国労働協約(CCNL)を適用することにより、ライダーの雇用は労働者に公正な賃金、諸権利、より大きな社会的および安全上の保護を与えます。
 「ボローニャ、フィレンツェ、ミラノ、パレルモの裁判所の判決の後、そして、ミラノ検察官による調査の後、2日間の全国動員〔=ストライキと集会〕後、当事者間の長い交渉の後、国務長官NIdiLCGIL-私たちは、この合意が、イタリアだけでなく、他の食品配達プラットフォームやいわゆるギグエコノミー全般への道を最終的に導くことを願っています。」と、-シルビア・シモンチーニ国務長官はコメントしました。
 NIdiL・CGIL〔労働総同盟の非正規部門〕の書記長であるアンドレア・ボルゲージ(AndreaBorghesi)氏は、次のように述べています。Cgil、Cisl、Uilの輸送および非定型労働者の産業部門の代表者を含む交渉テーブルは、他の多国籍のアルゴリズムに重要なシグナルを送信します。何も発明する必要はありません。法規制と国内協約はすでに存在しており、偶発的独立協働という超不安定な契約類型を濫用することなく適用されます。」
□「これらの労働者を支援するために労働組合としてとった行動は、以前よりも強力であり続ける必要がある。他の食品配達企業とその協会であるAssodeliveryは、規則、保障措置、まともな賃金と、健康・安全のための対策を定めるために労働組合と協力すべきである」と、ボルゲージ書記長は結論しました。

配達員が、リフレッシュと技術的・法的支援を受けられる施設として、関係団体とナポリ市が合意して発足した。
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  • ギグワーカーの権利改善へ 欧州委 労使と協議 労組「法的進歩を政治変革に」(赤旗2021.2.26)→欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会は24日、インターネットを通じて単発の仕事を請け負う「ギグワーカー」の権利や労働条件の改善に向け、労働組合や企業側と協議を開始しました。
  • ギグ労働者保護の流れ強まる/欧州の司法判断/雇用関係認める判決相次ぐ(連合通信21.2.13)→ウーバーなどに代表されるギグ労働者の保護をめぐる動きが欧州でめまぐるしい。昨年は、フランス、イタリア、スペインの最高裁が労働者性を認める判決を下した。「ウーバーとその運転手が、デジタルプラットフォームを介してつながっている際、両者の間には従属関係が存在する。運転手は独立事業主だという主張はフィクションだ」(フランス)と断定するなど、欧州ではギグ労働は単発の仕事を繰り返す請負ではないという司法判断が定着しつつある。
  • 浦田誠「食事配達員の国際労働運動と労働者性をめぐる海外の判例動向(後編)」季刊労働者の権利340号(2021年4月)

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