岩波ブックレット「信号機の壊れた格差社会」読書感想

「信号機が壊れた『格差社会』」の読書感想
書店で買って帰ったら、岩波書店から謹呈本が届いていたので、2冊が机の上にある。著者は森岡孝二、雨宮処凜、佐高信の3氏である。是非お買い求め頂きたい。54ページであるから、1時間少しで読み終えることができた。読書感は、格差社会をうごかす力と「その先が見えた」点で、私なりの確信となったことである。
3氏とも政治を動かす青年労働者の立ち上がりを捉えての提起が説得力を持っている。今日の政治における力関係を、高齢者問題や増税、憲法問題などでも語ることができるが、このブックレットで3氏が語る内容は未来志向である。佐高氏は、「信号機を壊したのは、小泉・竹中による構造改革」「新自由主義と言うのは褒めすぎで、旧自由主義だ」と気持ちがいい。「政治の仕事は正常な信号機」、「意思表示を繰り返すことによって、政策を修正していくことができるのかもしれません」と結んでいる。雨宮処凜さんはネットカフェ難民を克明にとらえ、報告。ホームレス寸前の人がたどり着いた警察では「炊き出しは釜ヶ崎に行きなさい」と、生活保護制度について教えない。さらに派遣会社など「貧困ビジネス」を浮き彫りにしている。その餌食となる労働者は、昼間に寝る、トイレが寝室の実態には驚かされた。そして、彼女は「黙ってのたれ死にするな」と訴え、本当の敵を見つけてほしいと結んでいる。そして、森岡孝二氏(わが会長)は「いまこそ政治、政治がすべきこと」をテーマに、名ばかり管理職、過労死などを取り上げ、「タイム・プアか、マネー・プアか」では、その二つの極端さを捉えた問題提起。さらに、「福祉詐欺、日本」では、社会保障による所得の再配分が機能していないと指摘。最後に、最低賃金制度が世界水準の最低水準であり、「信号機」をなおす一つに指摘されたが、長年、最賃バカとも言われても40年近く取り組んできた立場からすれば、心強かった。このブックレットは読み物ではなく、たたかうガイドブックではないかと思った。服部信一郎(働き方ネット副会長・大阪労連副議長)

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