地下鉄清掃労働者が労働組合(建交労大阪地本)を結成して、低賃金の改善と雇用の安定を求めて、立ち上がって奮闘しています。その様子は、4月7日のNHKクローズアップ現代「官から民へ ゆれる民間委託」でも取り上げられました。大阪市交通局は、2007年度から地下鉄全駅(120駅)の清掃業務(ホーム、トイレ、更衣室・風呂・更衣室・仮眠所の清掃、シーツ交換)を全面的に競争入札としました。 そのため、それまでの労働条件はいきなり悪化し、収入は月22万円水準が15万円を切る事態となり、業務も1駅1人であったものが、3駅を2人で清掃するため、休憩時間がとれず、業務を完了させるためには、1時間もの早出サービス残業を余儀なくさせられています。労働時間は1人6時間労働でのシフト勤務である。大きな駅ではホーム清掃だけでも2時間を要しています。
これほどの重労働を強いりながら、雇用不安に悩まされ、しかも生活できない賃金となっています。落札は24ブロック単位で行われ、結果11社の事業者が請け負っていますが、同一職種の公務労働でありながら、賃金は最賃水準でバラバラとなっています。建交労大阪地本の全駅での調査では、最低賃金の731円(1社)から最高950円(1社、867円〜950円と意味で、950円もらっている労働者の実態は不明)でした。8割方は750円前後となっています。 しかも、最初から無理があるシフト勤務であることから、チームワークが崩れ、仲間同士でもめ事が絶えず、職場雰囲気がとても暗くなっているそうです。清掃労働者は60歳を越し、70歳の方もいる高齢労働者です。人生に苦労し、人の機微をとらえることが出来る人たちばかりですが、気持ちを暗くさせています。不安と低賃金のため、ダブルワークをしている労働者も居られ、大阪市の異常さに怒りを覚える実態です。
○ 賃金も問題ですが、雇用不安に苛まれています。
今年11月に、また入札がおこなわれ、失敗すれば「全員解雇」が訪れるからです。これまでは、労働組合を結成し、入札に失敗しても落札事業者に雇用を求め、雇用が引き継がれましたが、次回も同じように雇用されるかどうかは不明です。
○ これらは、公契約条例の視点が大阪市には無いことが最大の原因です。
「最低制限価格」が設定されていないことが、最低賃金水準の賃金実態をつくりだしています。建築局などの発注部局の公共工事では「最低制限価格」が設定されていますが、委託事業の入札には設定されていません。このひどさに、問題点をとらえながら、ゆとりとみどり局の公園清掃などでは設定されていることが分かりました。次回の市議会では、ILO条約94号条約に根拠をおく公契約条例制定の必要性とその視点からの改ざん策を要求したいと考えています。大阪の豊中市、東京の国分寺市での改善策が全国からも注目されていますが、大阪から全国にむけ地下鉄清掃労働者の実態を明らかにしながら、自治体委託労働者の権利まもるたたかいに拍車をかけて奮闘しましょう。アメリカのリビングウエッジはボルチィモアで始まりましたが、ここでも自治体委託の清掃労働者の過酷な労働から始まっています。(服部信一郎)