07年に労災で被災した派遣労働者(休業4日以上の死傷者数)は5885人(うち死者36人)に上り、製造業への派遣が解禁された04年に比べ約9倍に増加したことが20日、厚生労働省のまとめで分かった。厚労省が派遣労働者の労災件数を集計し明らかにしたのは初めて。日雇い派遣などの派遣労働者が十分な安全教育を受けないまま危険な業務に従事させられていることを裏付け、労働者派遣法改正の議論にも影響を与えそうだ。
まとめによると、被災者数は04年の667人から年々増加。労働者全体の被災者数は04年が13万2248人、07年も13万1478人で派遣労働だけ被災者が急増している。
業種別では、製造業が2703人で最多。▽運輸交通316人▽商業308人▽貨物取り扱い127人−−と続く。特に日雇い派遣が多いとされる貨物取り扱いや運輸交通での増加が目立つ。年代別では、30代が29%、20代が26・9%で、経験の少ない若年者が被災する例が多いとみられる。
死亡労災では、「粉砕機の運転を停止せずに清掃して巻き込まれた」(食品製造)、「ドリルで穴あけ作業中につなぎが巻き込まれた」(機械機具製造)など安全教育の不十分さが原因とみられるケースがあった。
派遣法を巡っては、秋の通常国会へ向けて厚労省が改正案の検討を進めている。派遣労働者が加入する労働組合「派遣ユニオン」の関根秀一郎書記長は「この数字さえ氷山の一角と見ている。きちんとした法的規制が必要だ」と指摘している。【東海林智】
厚生労働省が初めて明らかにした派遣労働者の労災件数。派遣労働者の安全確保が十分には行われていないことが浮き彫りとなり、規制緩和を続けた労働者派遣法の問題点を如実に示した。
派遣労働者の労災件数が大幅に増えた背景には99年の派遣業務の原則自由化、04年の製造業への派遣解禁がある。労災は製造業での発生が多数を占め、以前から認められている専門業務ではほとんどみられないからだ。
特に日雇い派遣などに見られる短期の派遣では、労働者が日々変わり仕事をするうえでの安全教育がおろそかになることは容易に予想される。実際「現場に行かないと仕事の内容が分からない」などの労働者の声は多い。
経営者が人集めの容易な派遣労働を重宝がる気持ちも分かるが、労災防止は最低限の責任だ。厳しい現状を示したデータは、派遣の在り方の見直しが待ったなしであることを物語っている。【東海林智】