オートバックス、「派遣」を直接指揮 尼崎の店舗で

2008年8月20日 朝日新聞大阪 

 自動車用品大手「オートバックスセブン」(東京)が兵庫県尼崎市の店舗で、カーオーディオなどを製造する複数のメーカー系の販売会社の「ヘルパー」に対し、直接指示・命令する権限はないのに、商品を販売させていたことがわかった。兵庫労働局は、職業安定法(労働者供給事業の禁止)に抵触する疑いがあるとして、オートバックスと各メーカー系販社を是正指導した。(重政紀元) 

 ヘルパーへの直接指示・命令をめぐる是正指導は、昨年以降、家電量販業界で相次いでいる。人件費削減が目的とみられ、今回の是正指導で家電以外の業種にもヘルパーに対する不当行為が広がっている実態が浮き彫りになった。

 関係者によると、オートバックスは今年3月、各メーカーの販売会社が人材派遣会社を通じて雇った複数のヘルパーを、尼崎市内の店舗に受け入れた。各ヘルパーは派遣会社との間で、客に対してそれぞれ特定のメーカーが製造するカーオーディオやカーナビゲーションなどの説明をする契約を結んでいた。

 ヘルパーに直接、指示・命令できるのは販売会社と人材派遣会社だけだが、オートバックスはヘルパーに自社の従業員と同じ制服を着るよう要求。社名入りの名札をつけさせたうえで、各ヘルパーが本来受け持つべきメーカー以外の商品も客に売るよう指示していた疑いがあるという。

 兵庫労働局が同月、同店などを立ち入り調査。この店にヘルパーを監督する責任者を配置していなかった疑いがある各メーカー系販売会社とともに是正指導した。

 朝日新聞の取材に対し、オートバックスセブン経営企画室の担当者は「ヘルパーの存在は認識していたが、労働者供給事業に関する認識が徹底していなかった。今後はメーカーと販売支援について十分な事前確認をしていきたい」と話している。

「人件費削減のため」と怒るヘルパー オートバックス

 メーカー側から派遣された「ヘルパー」を直接指揮したとして、自動車用品大手「オートバックスセブン」(東京)が兵庫労働局から是正指導を受けた。「人件費削減のために使われた」。指導対象となった兵庫県尼崎市内の店舗のヘルパーだった30代男性は朝日新聞の取材に対し、不当な指示・命令の実態を語った。

 大阪府内に住む男性は昨年3月、「カーオーディオなどの営業」という求人広告を見て人材派遣会社と契約。正社員採用が前提の「紹介予定派遣」として、大阪府内に本社があるメーカー系販社で研修を受けた。その後、ほぼ毎週末に兵庫県尼崎市内にあるオートバックスの店舗に行くよう求められた。

 他社製品の販売、ローンの手続き、残業……。オートバックスの社員とほとんど同じ業務を指示された男性は派遣会社などに何度も改善を訴えた。しかし、その声は聞き入れられず、男性は同6月に派遣元の人材派遣会社との契約を打ち切った。

 男性によると、同店には複数メーカーから送り込まれたヘルパーが7人前後おり、男性と同じような指示を受けていたという。「オートバックスの社員は我々に指示をするだけ。人件費を下げるために自分たちが使われているのかと腹が立った」と話す。

 男性の代理人を務める村田浩治弁護士(大阪弁護士会)は「ヘルパー制度は、メーカー側には自社製品の売り上げ増、量販店側には人件費削減などのメリットがある。一方で、立場の弱いヘルパーは理不尽な長時間労働や勤務内容の変更を強いられやすい」と指摘。「行政側はこうした商習慣をなくす施策を早急に講じるべきだ」と求めている。(重政紀元)

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