大阪市労組事務所、退去の取り消し命じる判決

Yomiuri Online 2014年09月11日

判決を受けて記者会見する大阪市役所労働組合の竹村・執行委員長(右)ら(10日午後、大阪司法記者クラブで)=里見研撮影(省略)

 大阪市が市役所庁舎から職員労働組合の事務所を退去させたことの是非が争われた2件の訴訟の判決で、大阪地裁は10日、市労働組合連合会(市労連)など計8団体の訴えを認め、市に退去の取り消しと計約410万円の損害賠償などを命じた。

 中垣内なかがいと健治裁判長は「事務所を退去させるのは、憲法が保障する職員の団結権の侵害。市長の裁量権を逸脱、乱用しており、違法だ」と述べた。

 橋下徹市長と労働組合の対立を巡る司法判断は初めて。市は、組合への便宜供与を禁じる条例を退去の根拠にしていたが、判決は「違法行為を適法とするための条例の運用は違憲で、無効」と言及した。

 判決によると、8団体は1982年以降、市の許可を受け、庁舎地下1階の6部屋を事務所として使っていたが、市は2012年1月、「行政事務のスペースが足りない」として同年3月末での退去を通告。6団体が応じ、空き部屋には市の各局が入った。残る2団体は通告に従わず、現在も部屋を使用している。

 判決は、11年12月の就任当時、橋下市長は使用を許可する意向だったが、組合が同年の市長選で対立候補を支援するため庁舎内で政治活動をしたと市議会で指摘された直後、方針転換したと認定。「行政事務のスペース不足ではなく、政治活動の防止が目的。組合活動に著しい支障が生じると認識し、団結権を侵害する意図があった」とした。

 そのうえで「事務所で政治活動があった証拠はなく、退去は社会通念に照らして著しく妥当性を欠く」として、6団体に対する庁舎使用の不許可処分を取り消し、庁舎に残る2団体についても今年度の部屋の使用を許可するよう命じた。

 賠償額は1団体につき70万〜33万円とした。

 労使間の争いを解決する機関には裁判所と別に労働委員会があり、大阪府労働委員会は今年2月、事務所退去を不当労働行為と認定。市が中央労働委員会に再審査を申し立てている。

 市の村上栄一総務局長は「主張が認められず残念。判決を精査し、対応を検討する」とコメントした。

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