企業と雇用契約を結ばずフリーランスとして働く人々について、公正取引委員会は労働環境の改善に向けた実態調査を始めた。フリーランスは独占禁止法と労働基準法の間のグレーゾーンとされ、企業側が引き抜き防止を定めたり、不利な取引条件を押しつけたりといった懸念が指摘されている。公取委は独禁法の適用で防ぐことができないか、調査や検討を進めている。
近年、インターネットの普及と就労形態の多様化に伴い、企業と対等な関係で仕事を受けるフリーランスが急増。クラウドソーシング大手のランサーズ(東京都渋谷区)によると、過去1年で雇用とは別に仕事で報酬を得た人の数は推計で約1122万人。副業タイプの増加が目立つが、プログラマーやエンジニアなど専門性の高い人や個人事業主らも約390万人に上り、法的位置付けがあいまいなまま「企業による人材獲得競争が過熱している」(公取委幹部)という。
米国ではIT系の人材を巡る引き抜き防止協定が問題視され、連邦取引委員会と司法省がガイドラインを作成するなど対策が進んでいる。
日本の公取委も、フリーランスの法的位置付けを整理する有識者検討会(座長=泉水文雄神戸大大学院教授)を8月、始動させた。米国の取り組みを参考にするなどし、国内で起きている問題を調べている。IT技術者のほか、同じように移籍・独立を巡るトラブルが多いとされる芸能人やスポーツ選手の契約実態も含まれており、芸能事務所やスポーツ団体からも聞き取りを行っている。
公取委の杉本和行委員長は7月の記者会見で「芸能界やスポーツ界に独禁法を適用できるのか(という問題)は、グレーエリアで対応していなかったが、適用すべきか議論していく」と述べた。検討会は年度内に報告書をまとめることを目指している。【渡辺暢】