2014年春に卒業する大学生の就職活動が12年12月1日に解禁された。そこでは、早くも企業の合同説明会に「ある異変」が起こっていると話題になっている。
日本経済団体連合会の倫理憲章の見直しによって、企業説明会の開始時期が従来の10月から12月に移行して2年目。大手企業など約240社が参加した東京ビッグサイトの合同説明会にもたくさんの大学生が詰めかけ、列をつくった。
中小企業に目を向ける学生が増えてきたが…
12月1日、企業説明会がはじまった!!
景気の低迷で厳しい採用情勢が続き、来春卒業予定の大学生約55万5900人のうち、まだ約15万6700人が内定を得ていない(2012年10月1日時点、文部科学省調べ)とみられていて、14年春卒業の大学生の就活にも厳しい見通しが伝えられている。
そうした中で、中小企業にフォーカスしたセミナーも多数開かれるようになった。大学生の就活に詳しい石渡嶺司氏は「中小企業に目を向ける学生が増えてきたことは確かです」と話す。大学側でも、就活期間の短縮化に対応しきれなかった昨年の反省から、就活セミナーの開催時期を前倒しするなどして学生たちを後押ししてきた。
そんな動きもあってか、文部科学省によると、12月解禁の「1期生」である、来春卒業予定の大学生の10月1日現在の就職内定率は63.1%と、前年同期に比べて3.2ポイント改善された。過去最低だった2010年10月の57.6%から2年連続で前年を上回っており、「全体の雇用状況が改善したため」(石渡氏)という側面もある。
一方で、解禁初日となった12月1日、福岡県で開催された合同説明会では、ちょっとした「異変」があった。
「流通業や飲食・サービス業などには学生がなかなか集まらなかった」と、石渡氏は言うのだ。しかも、その現象は多くの学生が集まるはずの有名企業にも見られたという。
厚生労働省が公表している業種別離職率によると、若者が正社員として就職したあとに3年以内に離職した人の割合は、教育や学習支援業と宿泊・飲食サービス業が48%、次いで生活関連サービス業や娯楽業が45%と、サービス業で高い傾向にあった。
「離職率の高い業種に、いわゆるブラック企業が多いとみている学生が少なくないようで、どうやらそれらを避けているようなんです」(石渡氏)
就活期間の短縮化が大企業には有利に働く
学生の目がようやく中小企業にも向けられるようになったとはいえ、大企業が就活のキャスティングボートを握る形は変わらないらしい。
それは就職活動の解禁日を2か月遅らせたことが影響しているようだ。前出の石渡氏は、こう言う。
「内定をもらえる学生とそうでない学生の2極化がより鮮明になり、優秀な人材確保という面では大企業に有利に働いたからですよ」
就活期間が短縮化されたことで、学生の業界研究や企業研究が不足しているとされたが、石渡氏は「就職への意識の高い学生は解禁日前から準備をしていますし、企業側も大学OBとの懇親会などの名目で学生と接触していました」と指摘する。
ただ、内定率は2008年のリーマン・ショック以前の水準には戻っておらず、大企業を目指す学生にとって厳しい状況には変わりない。
「この流れに対応できなかった学生は就活を途中であきらめてしまったり、留年を決めたり進学に切り替えたりしています」(石渡氏)