毎日新聞 2013年02月16日 東京朝刊
政府は15日、規制改革会議(議長・岡素之住友商事相談役)の第2回会合を開き、混合診療の対象拡大や解雇規制の見直しなど、59項目の検討課題が事務局から提起された。今月中にも開く次回会合で項目を絞り込んで具体的な検討に入り、政府が6月にも策定する成長戦略に盛り込む方針だ。規制改革は、経済再生を目指す安倍晋三政権の最優先課題だが、業界団体や関係省庁の強い抵抗も予想され、政権のリーダーシップが問われる。
◆雇用
◇解雇容易、受け皿課題
規制改革会議では、海外に比べて厳しいとされる解雇規制の緩和や、労働時間管理の柔軟化などが俎上(そじょう)に載った。正社員の解雇のハードルが下がれば、正社員重視や終身雇用などの雇用慣習が崩れる。労働者の企業間の異動が進み、若年雇用の拡大にもつながる効果が期待されるが、失業者の増加なども懸念される。
日本で企業が正社員を解雇するには、解雇が必要なほど経営が悪化していたり、解雇を避けるためのさまざまな対策を打ったりする必要がある。これらは判例で示されたものだが、具体的にどうすれば要件を満たすかは不明確だ。経済界は、どんなケースが不当解雇にあたるのか明確化するとともに、欧米などで一般的に行われている一定のお金を支払って労働契約を解消する仕組みを作るよう要望。労使が納得できるルールを作り、解雇規制の緩和につなげる。
しかし、電機産業や外資系企業では昨年ごろから、強引な退職勧奨や会社への出入り禁止など乱暴な解雇が指摘された。連合幹部は「企業は実質的に解雇を自由にやっているようなもの。これでルールまで変えられたら雇用安定の底が抜ける」と警戒する。
また、非正規労働者の比率が35%を超え、年収200万円以下の「ワーキングプア」と呼ばれる労働者が1000万人を超える中、解雇規制の緩和が不安定雇用をさらに拡大する恐れもある。規制緩和と並行し、中途採用の拡大など、解雇の受け皿をどうするかの議論も進める方針だ。
労働時間の規制緩和では、勤務時間などを労働者の裁量で決められる裁量労働制の拡大を議論する。現在は一部の業務しか認められていないが、対象を広げれば、女性や高齢者ら短時間の勤務を望む人にも就労機会が広がるとされる。しかし、仕事が長くなっても残業代などが出ないため、「時間外手当の削減が目的ではないか」などの反対が根強い。【東海林智、久田宏】