【春闘】 デフレ脱却に「3・5%の賃上げ必要」との声も

産経ニュース 2013.3.2

 安倍政権は物価上昇率2%の目標を掲げているが、給料が上がらずにモノの値段だけが上昇すれば、生活が苦しくなるだけだ。国内総生産(GDP)の6割を占める個人消費を盛り上げ、デフレ脱却につなげるためにも賃上げは欠かせない。エコノミストの間には、連合が求める「給与総額1%」を上回る賃上げが必要との見方も出ている。

 連合系のシンクタンク「連合総研」の龍井葉二副所長は「物価上昇は、賃金が上がらないとそもそも成立しない」と話す。物価と企業の利益だけが上がっても、賃上げをしなければ、デフレ状態に戻ってしまうとし、「先に所得を引き上げるべきだ」と訴える。

 実際にデフレから脱却するにはどの程度の賃上げが必要なのか。

 富士通総研の根津利三郎エグゼクティブ・フェローは「3・5%の賃上げが必要。1%では効果がない」と主張する。根津氏は物価目標2%の達成には、景気実感に近いとされる名目GDPで3%以上の経済成長率が必要と指摘。賃上げも同水準で行うべきだとし、そのうえで「少子高齢化で減り続ける給与所得者の減少分を補い、消費を下支えするためには0・5%の上乗せが必要」という。

 一方、みずほ総合研究所の内藤啓介主席研究員は「1%の賃上げでも萎縮したマインドを変えるきっかけになる」とみる。個人消費拡大につながれば、「経済の安定成長の基盤になる」と期待する。

 国際労働機関(ILO)によれば、物価変動を加味した2010年の実質賃金の伸び率は日本2・3%、ドイツ1・0%、米国0・7%。日本の実質賃金が欧米諸国を上回るのは、デフレの影響が大きいからだ。物価下落が賃金を補ってきたともいえる。しかし、物価が上がらなければ企業の売り上げも伸びず、賃金は低く抑えられた状態が続く。この悪循環の先にあるのは経済規模の縮小だ。

 日本総研の山田久チーフエコノミストは「賃上げの実現には企業の生産性を上げることが必要で、構造改革が不可欠。労働側も痛みを伴う改革を受け入れなければならない」と指摘している。

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