社員を新規採用する際に、「喫煙しないこと」を条件にする会社が増えている。
2003年5月に施行された健康増進法で公共施設やレストランなどで受動喫煙の防止措置が求められ、分煙が進展。最近では全面禁煙の場所が増えたり、就業時間中の禁煙を進めたりする動きが広がっている。それを「もう一歩進めよう」というのだ。
「社員の健康増進」「業務効率の低下防止」が目的
喫煙者を採用しない企業が増えている!
旅館やホテルを運営する星野リゾートが、採用情報サイトのトップページに「あなたはタバコを吸いますか?」と問いかけて、話題になったのが2010年。「NO」を選ぶと「ようこそ!」と歓迎のメッセージが現れるが、「YES」を選ぶと、たばこを断つことを誓約することができると答えない限り、募集要領のページには進めない。
富山県を中心に「明文堂書店」を展開する明文堂プランナーは2011年から、同じ手法で新卒・中途採用の募集を行っている。2013年4月6日には採用情報を更新。14年春の新卒採用でも、喫煙者は採用しない方針だ。面接時に、必ず喫煙の有無を確認するという。
「喫煙しない」ことを採用の条件とする会社はここ数年増えている。製薬会社のファイザーやスポーツクラブのセントラルスポーツ、ソフトウェアのAcroquest Technology、半導体機器製造などのエムテック マツムラ、モバイル広告代理店のライブレボリューション、北陸3県を中心に30か店の靴チェーンを展開するワシントン靴店(富山市)なども喫煙の有無を採用時に確認している。
会社が「たばこを吸わない人」を求める理由は、大きく3つ。一つは「作業効率」。喫煙者は血液中のニコチン含有量の多少によって集中力が低下する例が少なくない。また、喫煙する社員がより頻繁に休憩をとることから生じる社員の不公平感がある。
たばこの臭いでお客などを不快にさせることや、「喫煙スペース」を設けることで施設の運用効率が悪くなることもマイナス点だ。もちろん、社員の健康への影響(職場環境)もある。
企業イメージを損なうことにも…
2011年6月から「喫煙者ZERO宣言」、就業時間中の禁煙を就業規則に追加した製薬会社のファイザーも、採用時に喫煙の有無を確認する企業の一つ。同社は、「基本的に、入社するまでに禁煙することを強く求めています」と話す。
また、現在勤務している社員については禁煙治療の費用を全額補助し、支援。社内の「喫煙者ゼロ」を目指している。
同社は禁煙補助薬を取り扱っているうえ、禁煙サイトの「すぐ禁煙.JP」で「職場の禁煙対策」を勧めている。またスポーツクラブなど、健康増進をうたっている会社の社員が、スパスパとたばこを吸っていては説得力に欠けるし、イメージもよくない。
他社との競争や企業イメージのうえでも、「喫煙しない」人材が求められているわけだ。
日本たばこ産業(JT)の「全国たばこ喫煙者率調査」によると、2012年の男女をあわせた喫煙者率は前年比で0.6ポイント低下して21.1%となり、17年連続で過去最低を更新。たばこを吸う人は、もはや「少数派」だ。会社での喫煙者の居場所は、いよいよ狭くなっている。