5人に1人が「望まない非正規雇用」

NHKニュース 5月14日

総務省が、パートや派遣社員などの非正規労働者を対象に、その仕事に就いた理由を初めて調査したところ、正規の仕事がないという理由から望まずに非正規の仕事に就いている人は348万人で、非正規労働者のおよそ5人に1人に上ることが明らかになりました。

総務省は、増加傾向にある非正規雇用の実態を把握するため、ことし1月から3月までの平均の労働力調査で、パートや派遣社員などの非正規労働者を対象に、その仕事に就いた理由を初めて調査しました。

それによりますと、非正規労働者の数は1870万人で、多い理由の順に、「自分の都合のよい時間に働きたいから」が418万人、「家計の補助や学費などを得たいから」が390万人、「正規の仕事がないから」が348万人となり、正規の仕事がないという理由から、およそ5人に1人が望まずに非正規の仕事に就いていることが明らかになりました。
また、男性の理由では、「正規の仕事がないから」が171万人で最も多く、次いで「自分の都合のよい時間に働きたいから」が120万人、「専門的な技能などを生かせるから」が67万人などとなっています。

一方、女性の理由では、「家計の補助や学費などを得たいから」が324万人で最も多く、次いで「自分の都合のよい時間に働きたいから」が298万人、「正規の仕事がないから」と「家事や育児、介護と両立しやすいから」がいずれも177万人などとなっています。
厚生労働省が3年前に行った推計では、望まずに非正規の仕事に就いている人は339万人で、今回の結果はこれを9万人上回っており、総務省は「厳しい雇用情勢が続いていることが改めて裏付けられた」としています。

日本企業の競争力低下も
今回の調査結果について、非正規労働者の雇用問題に詳しい「みずほ情報総研」の小曽根由実さんは、「非正規で働く人たちは、正社員に比べて、仕事の内容も期間も限定的なため、十分な職業能力を身につけられない。企業は厳しい経済情勢のなかで人件費を抑えようと非正規労働者を増やしてきたが、このまま多くの若い人たちが不本意に非正規を続け能力を身につけられなければ、日本企業の競争力の低下にもつながりかねない」と話しています。

こうした非正規労働者を減らす対策については、「国は、職業訓練に力を入れて正社員化を後押ししようとしているが、訓練では基礎的な能力しか身につかず、それだけでは必ずしも正社員に結びつかない。働きながら実践的な能力を身につけられる、トライアル雇用などをもっと充実させるべきだ」と指摘しています。

また、正社員と非正規労働者の中間的な働き方については、「安定的な雇用も確保されるし、正社員に向けたステップアップにもつながるので、非常に有効な手段で、今後、広げていくべきだ」と話しています。

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