株上昇を喜ぶ麻生副総理にFP「株価に一喜一憂は素人」と指摘

週刊ポスト2013年6月7日号 [2013/05/28]
 
新聞各紙の世論調査では、アベノミクスで景気回復を「実感できない」という回答が軒並み7〜8割に達している。どうやら国民の間でも安倍マジックの底が割れてきたようだ。
 
だから、きっと誰かが言い出すだろうと思っていた矢先、麻生太郎・副総理がこういってのけた。
 
「『株価が上がっても株は持ってないので関係ない』という人もいると思うが、年金は株式の運用で成り立っている。7月に年金の運用状況が出てくるが、ウン兆円の黒字になる。アベノミクスは株だけではない。一番肝心の社会保障の元の元も稼ぎ出している」(5月18日、札幌市内での講演)
 
株が上がれば年金運用が儲かり、国民にも恩恵が回るという“風桶理論”を披露したわけだ。
 
目の前に7月の参院選での勝利がぶら下がっているこの政権は、安倍首相の持論である憲法96条改正も国防軍創設も封印し、あくまで景気回復を喧伝して一点突破をはかる構えだ。
 
しかし、麻生氏の言葉を鵜呑みにするのはちょっと待ってほしい。ファイナンシャルプランナーの紀平正幸氏は、「麻生さんは年金運用のイロハがわかっていない」とこう指摘する。
 
「年金資金は国内株式に14.5兆円、国債を中心とした国内債券に67兆円、外国の株と債権に25兆円などと、分散投資されている。
 
日経平均株価はこの1月から1.5倍に上がったので、たしかに日本株の含み益が7兆円程度増えてもおかしくない。しかし、その一方で国債の先物価格は3月以降約3%下落しており、最大2兆円くらいの含み損を抱えている可能性がある。さらに海外のヘッジファンドは日本国債の売りで大儲けするチャンスを狙っていると見られており、それで国債価格が急落すれば年金の含み損が一気に拡大するリスクがある。
 
株の値上がりとはいっても多くは含み益の段階で、将来、株価が下がれば消えてなくなるのも当然のことです。そのように運用はポートフォリオ全体で考えるのが鉄則で、目先の株価に一喜一憂するのは素人です」

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