あってもなくても定時には帰れない? 形骸化する「ノー残業デー」の実態

刊ダイヤモンド 2013/05/29

多くの企業が導入している「ノー残業デー」。「残業するのが当たり前」の風潮がある日本において、「ノー残業デー」は「働き過ぎ」を回避するためのものとして導入されているが、実際は形骸化しているという指摘も絶えない。ビジネスパーソンが体験している「ノー残業デー」の実態とはどのようなものか?

 アンケートはキーマンズネットが2013年4月18日〜24日にかけて実施。有効回答数は506。

 ノー残業デーに「飲み会」 無給で残業のような気分に

 会社に「ノー残業デー」のような残業時間を減らすための制度はある? キーマンズネットは、勤務先に「ノー残業デー」制度が「ある」(71%)と答えた人、「ない」(29%)と答えた人両方からのコメントを掲載している。

 まずは「ある」派のコメントから紹介しよう。

 「堂々と帰れるので、残業日とメリハリがついて有効に活用しています。ただ、家事という仕事がまってます」(40代・男性)
 「いつも夜遅くまで仕事しているので、ノー残業デーでたまに早く帰れる日があると、幸せを何倍も感じられます」(50代・男性)
 「月に2回はあります。仕事が立て込んでいるとき、猛スピードで仕事をこなす自分がいとおしいです」(40代・女性)

 このように前向きなコメントが寄せられたが、メリットを感じているという声はどちらかというと少数派のようだ。

 多かったのは、「“ノー残業デー”という名前だけで実際は帰れない」という次のような意見。

 「ノー残業デーに飲み会をよくやるので、無給で残業しているような気がします」(20代・女性)
 「アナウンスが流れるだけで、強制ではない。ただ、早く帰りたい、という空気にはなる」(30代・男性)
 「ノー残業デーに無給の社内教育がある、これって無意味」(40代・男性)
 「制度はあってもペナルティがないので誰も守ってはいない」(50代・男性)
 「管理職には適用されないので、定時後オフィスには管理職ばかりが残って仕事をしている(50代・男性)

 なかには、「『ノー残業デー』の日はそれを口実に帰れますが、逆にそれ以外の日はかえって帰りづらい雰囲気を感じます」(50代・男性)のように、本末転倒な意見も。

 ノー残業デーの「ある会社」が良くて、「ない会社」が悪いとは限らない

 「ない」派から寄せられたコメントはさまざまだ。「個人で週に1度はノー残業デーを設定するように言われているけど、強制ではないので」(30代・男性)という、会社側としては「ある」が、実際には「ない」という意見。

 「昔はあったが、結局サービス残業になりコンプライアンス上問題有りとの判断で、今はないです」(40代・男性)というように、昔はあったが、「ある」派から多く聞かれたような問題の末になくなってしまったという意見。

 また、「親会社で導入されているため、返事が遅れたり翌日の業務量が増えるため、こちらとしては大変迷惑(40代・男性)と、「ノー残業デー」のある仕事相手に振り回されることに憤る人も。

 「絶対作るべきだとアピールしているが、上層部は無反応。残業代だけでなく電気代など管理費も節約効果があると思うのだが」(50代・男性)というように、上層部の理解を得られない会社もあれば、「2011年夏に節電のために一時的に設けられましたが、その後はなくなりました。個人的にノー残業デーを決めている社員は、グループウェアで「今日は残業したくない」という表明をしています(そしてそれが尊重される社風です)」(30代・女性)と、個人の裁量に任せられている会社もあるようだ。

 その他には、「ノー残業デーはないけれど、適度に早く帰れる日が時々あるから大丈夫」(50代・男性)、「定時退社が習慣になりました。最初は何か後ろめたさを感じてましたが、次第に自分は仕事が早いことにも気づきました」(60代・男性)、「厳しく管理されている状態なので自主的に残業はできない。残業なしが基本スタンス」(40代・男性)というように、残業デーがなくても快適に仕事をできているという人や、もともと残業自体がNGという人もいた。

 アンケートを見ると、一概に「ノー残業デー」が「ある」会社が良くて、「ない」会社が悪いわけではないことがわかる。確かに、日ごろ残業が常態化しているからこその「ノー残業デー」なのだろうし、制度があっても使えない雰囲気があるのであれば、設置しても意味がない。

 残業が常態化すると、オンとオフの切り替えが曖昧となり、「残業時間でやればいい」と効率良く仕事を行う能力が低下することも考えられる。会社にいる時間が長い人が優秀な人、というわけでもないことには気づいている人も多いだろう。

 そうした現状を踏まえて、あなたは「ノー残業デー」について、どう思いますか?

(プレスラボ 小川たまか)

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