過労死110番:相談25周年、記念シンポ 過労死のない社会に 遺族「父の死無駄にせぬ」

毎日新聞 6月14日(金)

 ◇学者や弁護士ら考える

 大阪で始まった弁護士らによる相談電話「過労死110番」が今年で25周年を迎え、記念シンポジウム「過労死社会は変革できるか」が大阪市中央区の府立労働センター(エル・おおさか)で開かれた。約50人が参加し、過労死・過労自殺のない社会づくりを考えた。【服部陽】

 学者や弁護士らでつくる「大阪過労死問題連絡会」(会長・森岡孝二関西大教授)が主催した。

 熊沢誠・甲南大名誉教授が25年の経過を踏まえて講演。最近の特徴として「企業が若者に過大なノルマを課した上で、達成できないと徹底的に非難し、自尊感情を破壊する」と指摘し、「遺族の闘いにより前進は見られるが、過労死の足音は絶えることがない」と訴えた。

 家族を亡くした3人も登壇した。父親を過労自殺で亡くし、現在は兵庫県豊岡市で弁護士として活動する下中喜代美さんは「父の死を無駄にしないため、支えてくれた人たちへの恩返しのつもりで頑張りたい」と意気込みを語った。また、立命館大大学院で学ぶ韓国人留学生、姜〓廷(カンミンジョン)さんは「韓国の中小企業では基本給が低く、残業をせざるを得ない。過労死が社会問題になっておらず、明確な基準を設けることが重要だ」と報告した。

 最後に森岡会長が「長時間労働が諸悪の根源だ」と主張。遺族らが制定に向けて100万人の署名を集めている「過労死防止基本法」への理解を求めた。

 同連絡会は15日午前10時〜午後3時、過労死・過労自殺に関する無料の電話相談を受け付ける。番号は06・6364・7272。15日以降は常設のホットラインとして相談を受け付けるという。

この記事を書いた人