【Q&A】ホワイトカラー・エグゼンプション 批判強く

共同通信 2014年5月19日

 政府内で、働く時間を自己裁量とする代わりに残業代などが支払われない「ホワイトカラー・エグゼンプション」と呼ばれる制度の導入が検討されています。
 Q どんな制度ですか?

 A 労働基準法は、労働時間を制限し、原則1日8時間、週40時間と定めています。労使で協定を結べば時間外労働が認められますが、残業代などの支払いが企業に義務付けられます。労働時間規制と言われ、年収など一定の条件を満たす主にホワイトカラーをこの規制から除外(エグゼンプション)しようとするため、こういう名称が付きました。労働時間の長短に関係なく賃金を支払う考え方です。

 Q なぜ労働時間を規制しているのですか。
 A 働いた時間に応じた賃金の支払いを企業に義務付けることで、長時間労働を抑制する狙いがあります。
 Q どんな内容が検討されているのですか。

 A 政府の産業競争力会議の民間議員で武田薬品工業社長の 長谷川閑史 (はせがわ・やすちか) 氏は4月に二つの案を提示しています。一つは、年収1千万円以上で高度な職業能力を持つ人が対象で、賃金は労働時間ではなく仕事の成果に応じて支払う成果主義になっています。金融やIT分野の専門職種などを想定しています。

 Q もう一つは?

 A 職務内容が明確で「労働時間を自己裁量で管理できる人」を対象とし、国が範囲の目安を定めた上で具体的には企業ごとに労使合意で決める方式です。賃金も基本的に成果主義で、国は年間労働時間の上限について一定の基準を示すとしています。主に介護や子育てで働き方に制約がある人を想定していると説明していますが、年収に関係なく幅広い層が対象になり得るのが特徴です。

 Q 提案の狙いは?

 A 民間議員は、働き方の多様化に対応して生産性を向上させるには、時間に縛られない新たな制度が必要と主張しています。経済界は以前からホワイトカラーには一律の労働時間管理はなじまないと主張しており、こうした考え方に沿った提案内容と言えます。

 Q 労組などは懸念を示していますね。

 A はい。サービス残業や、若者をパワハラや長時間労働で使い捨てるブラック企業が横行する中で規制を緩和すれば、成果を挙げるまで際限なく働かざるを得なくなり、心身の障害や過労死に追い込まれる労働者がさらに増えると反発しています。仕事の内容や範囲が不明確な働き方が主流の日本で、労働時間を自己裁量で決められる人は少ないとの指摘もあります。

 Q 過去にも議論が。

 A 第1次安倍政権は似たような制度を導入しようとしましたが、「残業代ゼロ法」「過労死促進法」と批判され撤回に追い込まれました。産業競争力会議などは6月にまとめる新たな成長戦略に反映させ、規制緩和の目玉にしたい考えですが、労働法制を所管する厚生労働省は慎重姿勢で、曲折が予想されます。

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