働く前に現実知ろう…学校で労働法学ぶ広がる

読売新聞 2014年06月05日

どんなことでも相談できる総合労働相談コーナーという窓口をおぼえておいてほしい」と、埼玉労働局の斎藤さんが呼びかけた(大東文化大で)

 中学・高校や大学で、労働法の基本的な知識を身につけさせる取り組みが広がっている。

 非正規雇用の増加など働く環境が変化する中、長時間労働や一方的な解雇を規制する法律を知ったうえで社会に出てほしいと学校側が考えるようになっているためだ。

 「働き始めて、業務内容や労働時間、賃金などの労働条件がおかしいと思ったら、1人で判断せず、必ず相談に来て」――。大東文化大(埼玉県東松山市)で今月上旬に行われた「知って役立つ労働法」をテーマとした講義。講師の埼玉労働局職業安定部長、斎藤明男さんが、就職活動を控えた2、3年生に呼びかけた。

 斎藤さんは、〈1〉企業は時間外労働や休日労働に割増賃金を支払わないといけない〈2〉客観的に合理的な理由がなければ解雇はできない――など、労働基準法や労働契約法の要点を説明。相談窓口として、労働基準監督署や都道府県労働局の「総合労働相談コーナー」を紹介した。

 受講した3年生の女子(20)は、「相談に乗ってくれる窓口があると初めて知り、安心して働けそう」と話した。

 教育現場が外部講師を招いて、働き方に関する法律などを学ばせる例は、他にもある。

 若者からの相談を受ける労働組合「首都圏青年ユニオン」(東京)は、高校や大学で、寄せられた相談内容や非正規雇用の実態などを盛り込んだ講義を行っている。

 神奈川県社会保険労務士会も、県内の中学・高校への出前授業を2003年から無償で実施。ここ数年は受講者が急増しているという。「身を守ってくれる労働法があるから、働くことを不安に思わず好きな仕事に挑戦してほしい」と話す。

 こうした授業が増えている背景について、若者の働き方に詳しい東京大教授の本田由紀さん(教育社会学)は「若者の労働環境の悪化という認識の広がりがある」と見る。

 非正規雇用の若者の増加や、過酷な労働を強いる「ブラック企業」の社会問題化などで、社会に出る前に身を守る対策を教えておきたいと考える学校が増えているという。本田さんは学生に対し、「今のうちから『おかしいと思ったら相談を』という発想を持ってほしい」と助言する。

この記事を書いた人