役に立たない若者雇用促進法の“最大の欠陥”… 弱気な厚労省と企業の圧力でブラック企業は野放し!

週プレNEWS  2016年5月1日
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160501-00064762-playboyz-soci

役に立たない若者雇用促進法の“最大の欠陥”… 弱気な厚労省と企業の圧力でブラック企業は野放し!

3月にスタートした就職活動。過酷な労働を強いるブラック企業から就活生を守る目的で作られた法律が同じタイミングで施行されていたのだが…

来年卒の大学生の就職活動がスタートして早2ヵ月――。

ブラック企業から就活生を守るために作られたはずの法律が、すこぶる評判が悪い。昨年10月から一部で今年3月から施行されている「若者雇用促進法」だ。

【参照】就活生を狙う求人詐欺が横行、給料水増しの手口とは?

その実態をひとつずつ見ていこう。

まず、同法ではハローワークに対し、過去に労働関係法令に違反した求人企業の新卒者の求人申し込みを拒否できる権利(求人不受理)を認めている。残業代不払いや違法な長時間労働を繰り返すブラック企業を締め出す目玉の施策として注目されていたところだが、現実は…。都内にある4年制大学のキャリアセンターの担当者がこうボヤく。

 「就活生にとっては全く頼りになっていませんね。『求人不受理』を認めているのはハローワークだけで、リクナビやマイナビといった就職ナビは対象外だからです。例年、学生に対する求人に占める割合は、ハローワークが2割、民間の就職ナビが8割。学生が利用する機会が少ないハローワークだけを対象にしても意味がないでしょう」

なぜ、就職ナビは対象から外されているのだろう。

 「ハローワークの求人とは違い、リクナビやマイナビで扱う求人は広告です。サイトへの掲載は就職ナビの運営会社と求人企業の契約関係の中で成り立つことですので、業界団体や各企業の自主的な取り組みに委ねています」(若者雇用促進法を所管する厚生労働省・若者雇用対策室)

 「厚労省は直轄組織のハロワには強く出るけど、大手企業が名を連ねる就職ナビの運営会社にはどこか気兼ねしていて、弱腰なんです」(前出・キャリアセンター職員)

では、就職ナビの運営各社はブラック企業対策をどのように講じているのだろうか。大学キャリアセンターの職員がこう続ける。

 「こちらとしては、サイトへの求人掲載を拒否してほしいところですが、ほとんど野放しになっているのが実情といえます。就職ナビの運営会社にとってブラック企業は“優良顧客”ですからね。人が集まらないので求人広告を頻繁(ひんぱん)に掲載し、料金が高い大きな広告枠を定期的に買ってくれる。就労環境が劣悪な企業とわかっていても、自社の利益を優先して目をつむってしまうのでしょう」

さらに、若者雇用促進法で求人企業に義務化された「青少年雇用情報の提供」も“機能不全”に陥っていた。

この条項では、就活生から求めがあれば、それに該当する職場情報を提供しなければならないことを求人企業に義務付けている。就活生に提供しなければならない職場情報については以下の通りに定めている。

 (ア) 募集・採用に関する情報(過去3年間の新卒採用者数・離職者数/過去3年間の新卒採用者数の男女別人数/平均勤続年数)
 (イ) 職業能力の開発・向上に関する情報(研修の有無/メンター制度の有無など)
 (ウ) 雇用管理に関する情報(前年度の月平均の所定外労働時間の実績/前年度の有給休暇の平均取得日数/役員に占める女性の割合など)

 過去3年間の離職者数や平均勤続年数、月平均の所定外労働時間などは表に出したくないと考える企業も少なくないだろうが、就活生にとってはブラック企業を見分ける重要な指標となりうる情報だ。と、ここまではいいのだが…都内の4年制大学に通う就活生がこう話す。

 「離職者数や社員の平均勤続年数はぜひ知りたいころではありますが、企業に情報提供を求める際には、氏名や連絡先、所属学校名、情報提供を希望する旨を採用担当者に伝えなければならないんです(※メールもしくは書面で、説明会や面接時は口頭で)。そんなの聞けるはずないじゃないですか。離職者数などは企業にとってはデリケートなところだし、実名を明かして求めたら、選考で不利になってしまうんじゃ…と思ってしまいます」

 所属する大学を通じて情報提供を求めれば実名は明かさなくてもいいのだが…。都内の短大に通う就活中の女子大生もこう打ち明ける。

 「就活の時期になると就職課の職員は忙しそうで頼みにくいです(苦笑)。お願いしたら嫌な顔をされそう…。だから私は、公務員志望のコとか進路が異なる友達に頼んで説明会やメールで質問してもらっていました」

だが、企業に情報提供を求めたところで、納得のいく回答が戻ってくるとは限らない。実はこの点に若者雇用促進法の“最大の欠陥”があるのだという。前出のキャリアセンター担当者がこう話す。

 「この法律では、就活生や大学などから情報提供の求めがあった場合、『(上記ア〜ウの)3つのカテゴリーの中から、それぞれひとつ以上の情報提供をしなければならない』と義務付けています。

 分かりづらいでしょうが、要は、就活生が離職者数を知りたいと思って状況提供を求めても、企業側が『離職者数は教えたくない』と判断すれば、その替わりに『過去3年間の採用者数の男女別人数』を提供すれば義務を果たしたことになるのです。

 『前年度の月平均の残業時間(時間外労働時間)の実績』を求めても、企業側は『役員に占める女性の割合』を答えればお咎(とが)めなしというわけです」

なんだろう、この残念な仕上がりは…。就活生のために作られたはずの法律のはずがブラック企業を含めて採用企業側に都合のいい内容になっているではないか!

 「この法律もそうでしたが、労働・雇用に関する法律が作られる際には、公益委員、労働者委員、使用者委員で組織された審議会が複数回にわたって開催され、法律のベースが作られていきます。労働者委員は『労働者(若者)のための法律を!』と奮い立って審議会に臨むのですが、回を経るごとに大手企業の幹部が顔をそろえる使用者委員に気圧(けお)されて、蓋(ふた)を開けてみれば、労働者のための施策は骨抜きに。企業側に有利な法律ができあがってしまっている…。これはもうお決まりのパターンでね(苦笑)」(前出・キャリアセンター職員)

こうして新卒採用市場に野放しにされたブラック企業。結局、国も法律も頼りにならない…。就活生諸君! やはり自分の身は、自分で守るしかないようだ。

 (取材・文/興山英雄)

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