社会保障のは・て・な  Q 最低賃金とは

2014年6月10日 読売新聞

生活守っていくため必要

 Q アルバイトをしている友達が「時給が最低賃金ぎりぎりだ」と言って、怒っていたよ。最低賃金って何なの?

 A 国が定める労働者の賃金(時給)の最低額のことだよ。仕事の内容とか、正社員やアルバイトなど雇用の形態にかかわらず、全ての労働者に適用されるんだ。企業側が最低賃金(最賃)を守らなかった場合、罰則(50万円以下の罰金)もあるんだ。

 Q いくらぐらいなの?

 A 全国平均(加重平均)で764円だよ。東京都が一番高くて869円、沖縄や島根、宮崎など9県が最も低くて664円だ。

 Q どうやって決められるのかな。

 A 毎年、厚生労働省の審議会が目安を示し、都道府県ごとの審議会が具体的な金額を決め、10月ごろに改定される。地域ごとの労働者の生活費や賃金、事業所の支払い能力などを参考に決定される。

 Q 最賃って、どうして必要なの?

 A 労働者の生活を守るためだよ。人が最低限の生活を送るには、一定のお金が必要だ。企業の業績や景気が低迷しているからといって、賃金をとても低く抑えられたら生活できないからね。また、病気などで働けない人が受ける「生活保護費」よりも、働いて得る賃金が低かったら、労働意欲を損ねる。それを避ける意味もあるよ。

 Q 時給が最賃と同じだと、収入はどのぐらいかな。

 A 例えば、最賃の全国平均の時給(764円)で、法律で定められている最大限の労働時間(月173時間)働くと、月収は13万2172円。単純に12をかけると年収158万6064円だ。

 Q それでは、独立して暮らすのは大変だね。

 A 日本の最賃は、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中では最低水準だ。標準的な賃金(中央値)に対する最低賃金の割合は、フランスの62%、オーストラリアの53%に対して、日本は38%と低いんだよ。

 Q なんで低いのかな?

 A かつては、最賃近くで働くのは、主婦のパートや学生アルバイトなど、家計を補助するための人が中心だったから、低水準でもそれほど問題視されなかったんだ。でも、今の日本では、1年を通して働いている人のうち、年収200万円以下の人が1090万人もいて、家計の担い手も少なくないとされる。こうした「働く貧困層」をなくすことが重要な課題になっているんだ。

 Q だったら、もっと最賃を上げたらどうなの?

 A 経営者側は、最賃を上げると、経営が悪化して、かえって雇用を減らすことにつながりかねないと言って、反対しているよ。

 Q 難しいんだね。

 A ただ、賃金が低いことが、消費を低迷させている面もある。国も、2020年をめどに最賃の全国平均を1000円に引き上げることを目標にしているんだ。

 Q その実現のためにはどうすればいいの?

 A 最賃は、経済情勢にも左右されるから、単純に引き上げることは難しい。ただ、国は、中小企業の経営基盤の強化や、労働者の職業能力開発などの支援を通して、引き上げられる環境を整えようとしている。一生懸命働いても貧困から抜け出せない人を減らすよう、対策を進めてほしいね。(針原陽子)


 社会保障の基礎をQ&A方式で伝えます。若い世代の皆さんからの質問を歓迎します。
 ansin@yomiuri.com まで。

この記事を書いた人