関電の裏面史、内藤千百里・元副社長の独白

朝日デジタル 2014年7月28日

 盆暮れに現金を渡した総理大臣は、角さん、三木、福田、大平、鈴木、中曽根、竹さんまで。選挙のあるなしは関係なく、1回1千万円で年2回。

 《関西電力元副社長の内藤千百里(ちもり)は、元会長の芦原(あしはら)義重が現職首相に現金を渡す場面に立ち会ってきた。

明確に記憶しているのは田中角栄、三木武夫、福田赳夫、大平正芳、鈴木善幸、中曽根康弘、竹下登。1974年に電力業界が政治献金の廃止を宣言した後も続いたという》

 関電の中でやめようという話は出なかったね。具体的な目的で渡す汚いカネではないという意識だった。天下国家のためのカネ。一に電力の安泰、二に国家の繁栄。

 三木さんは事務所で私のひざを触りながら「足りない」と言ってきたことがあった。

 芦原さんが現金を渡すとニコニコして「お元気で何より」。福田さんは東京の自宅が多かった。何十羽のごっつい大きな鳥が飛んでくる家だ。

 天下国家の話をして帰り際にあうんの呼吸で置いて帰る。福田さんは玄関まで見送り「ありがとうー」と言っていた。

 大平さんも自宅。現金をもらうと「いやあ、お疲れさん」。鈴木さんは照明の暗い家だった。

 中曽根さんは事務所。「ありがとうございます」とさっと受け取った。竹さんも事務所やね。ベテラン秘書が一手に仕切っていた。

 私が現金の入った紙包みを関電の経理から受け取った。総理の家や事務所に着いて、車を降りる時に芦原さんに「はい、これ」と手渡す。

 総理との現金のやりとりはトップ同士。代わりがするわけにはいかん。芦原さんも「自分でやる」とプライドをもってやっていた。私はその間、秘書と前室で雑談しながら待っていた。

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