日本の先生、世界一多忙なのに指導には胸張れない

2014年6月26日05時40分

写真:早朝から部活朝練の指導に取り組む教諭=千葉県内の公立中学校(省略)

 経済協力開発機構(OECD)は25日、中学校教員の勤務環境などの国際調査結果を発表した。日本の教員は指導への自信が参加国・地域の中で最も低く、勤務時間は最も長かった。理解が遅い子に合わせた指導をする割合やICT(情報通信技術)を利用する割合は低い。多忙な中、指導に集中できずにいる教員のすがたが浮かび上がる。

校長「仕事に満足」最低

 2013年に実施した国際教員指導環境調査(TALIS)で、主に先進国の34カ国・地域が参加。08年に続き2回目で、初参加の日本では、全国から抽出した国公私立中学校192校の教員3484人と校長から回答を得た。

 学級運営や教科指導などについて、指導がどの程度できているか、自信の度合いを4択で尋ねた。「非常に良くできている」「かなりできている」の割合の合計を比べると、12項目すべてで参加国・地域中、最低だった。「勉強にあまり関心を示さない生徒に動機付けする」では21・9%で、平均の70・0%の3分の1以下。「生徒の批判的思考を促す」は15・6%(平均80・3%)、「生徒に自信を持たせる」も17・6%(同85・8%)だった。

 残る選択肢のうち「ある程度できている」を選ぶケースが多かった。

 教室での指導をどれくらいやっているかも4択で聞いた。「課題や学級活動にICTを用いる」に「しばしば」「ほとんどいつも」やっていると答えた割合は計9・9%(同37・5%)、「全生徒が理解するまで類似問題を練習」も計31・9%(同67・3%)でともに最低だった。

 一方、1週間の勤務時間は53・9時間(平均38・3時間)で最長。内訳をみると、部活などの課外指導が7・7時間(同2・1時間)、一般事務が5・5時間(同2・9時間)と飛び抜けて長かった。授業は17・7時間で平均(19・3時間)を下回った。

 研修の必要性についても14項目を4択で質問。「高い」と答えた割合が参加国・地域で最高だったのは「担当教科の知識」(51・0%)、「個に応じた学習」(40・2%)など6項目に上った。だが過去1年以内に研修を受けた割合は83・2%で平均の88・4%を下回った。受けられない理由は「仕事のスケジュールと合わない」が最多(86・4%)だった。

 文部科学省の担当者は「控えめな国民性もあるが、多忙で授業準備に時間が取れていないという意識や研修に出られないことが(自信の低さに)影響しているかもしれない」と指摘し、事務職員らの配置を進めることなどを対策にあげた。

■朝練、授業、生徒会・提出物点検…学校に15時間半

 千葉県郊外のニュータウン。空気に冷たさが残る午前6時40分、女性教諭(40)の運転する車が勤務先の公立中に着いた。

 私立高に勤めた後、公立中教員になって7年目。教科は国語、2年生の担任を持ち、男子ソフトテニス部の顧問だ。7時20分からの朝練に備え、ほぼ毎朝、この時間に出勤する。約30人の部員に目を配っていると、腹痛で練習を休む生徒の保護者から携帯に電話がかかってきた。

 8時15分に担任のクラスで朝の会。体調が悪く教室に入るのをためらっていた女子生徒が、廊下にうずくまった。肩をポンポンとたたきながら声をかけ、保健室に連れていった。

 1、2時間目は授業。定期テストの答案を返して平均点や課題を説く。休み時間も採点について尋ねてくる生徒とやりとりが続く。

 授業がない3、4時間目、職員室で提出物の点検に取りかかった。毎日提出させる生活ノートや家庭学習帳、定期テスト期間中の学習計画表。いずれもクラスの約30人分ある。生活ノートには赤ペンで必ず一言コメントを書き込む。合間には保健室をのぞいて女子生徒に声をかける。

 給食の時間。「たくさん残ってるよ」と声をかけながら鍋を持って生徒の机を回り、ニョッキのトマト煮のお代わりをよそう。やっといすに座ると、給食終了時刻まで7〜8分。揚げパンとおかずをかき込んだ。

 5、6時間目の授業後、この日は生徒会の委員会活動があった。教諭は生活委員会の担当。服装やあいさつなどの課題や反省点を出し合う話し合いに時折、アドバイスする。終わると部活のためテニスコートへ。最終下校時刻の午後6時15分まで練習を見守った。

 職員室に戻って間もない午後7時近く。長期欠席で日中は来られない受け持ちの女子生徒が、母親に付き添われて登校してきた。他の生徒が帰った後、登校できる日は来る。教室でテストを返したりしながら30分ほど過ごした。

 午後9時を回った職員室。提出物の点検はまだ終わらない。23人の教員中7人が残っている。「帰りたいけど、終わらない」とつぶやく別の女性教員、「おれ仕事が立て込んで学校に泊まったことありますよ」と話す男性教員。教諭は買い置きのチョコクッキーを取り出して他の教員にも配ると、自分も二つ口にした。「早く帰ってくださいよ」と言いながら教頭が引き揚げたのはこのあとだ。

 結局この日教諭が学校を後にしたのは午後10時を過ぎていた。
               (高浜行人、芳垣文子、岡田昇)

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