毎日新聞 2014年11月15日 地方版
◇理解求めセンター設立 街頭に立ち啓発「助かる人は必ずいる」−−柏原英人さん(64)=豊中市
過労死や過労自殺の防止対策を国の責務と定めた過労死等防止対策推進法が1日に施行され、今月は啓発月間。民間でもその趣旨を広めようと「過労死防止大阪センター(仮称)」結成準備会の事務局長を務める。20日には準備会主催のシンポジウムを大阪市中央区北浜東3のエル・おおさかで開く予定で「『過労死』が死語になるよう全力で頑張る」と意気込む。
大阪センターは弁護士や学者らを中心に、労働組合など幅広いメンバーで来年の設立を目指す。東京で10月に発足した過労死等防止対策推進全国センターや、全国各地で準備が進む同様のセンターと連携し、高校への出前授業などで若年層にも理解してもらえるよう検討するという。「画期的な法律だが、生かさなければ意味がない。過労死をどうなくすか、皆で考えたい」
大手損保会社に勤め、30年以上労働組合の執行部で労働条件や会社をよくしたいと取り組んできた。37歳だった1987年、損保会社の組合員代表らでつくる海外交流調査団の一員として、東西ドイツ(当時)やフランスなど欧州6カ国を回った。2〜3週間のバカンスを楽しみ、残業もほとんどしない現地の人々の働き方を目の当たりにし「日本は消費水準は世界最高レベルだが、生活が豊かとは言えない」と痛感。それまでは賃上げに熱心に取り組んでいたが「時間に対する認識を変えなければ」と考えるようになった。
帰国後、自分と家族の時間を大切にすることを目指し、府内の労働組合などが結束してできた「アフター5の会」に関わり、府などに「ノー残業デー」を働きかけるなど力を注いだ。現在は、労働問題や若者支援に取り組むNPO法人「働き方ASU−NET」の副代表理事を務める。活動の中で過労死遺族らと出会い、法制定を求める署名活動などを進めた。
法施行を前に10月末には、大阪市内で遺族とともに街頭に立ち、シンポジウムを案内するビラを配り「過労死をなくそう」と訴えた。「一人でも多くの人に法律を知ってもらうことで、助かる人は必ずいると信じています」