読売社説 保育士不足 賃金と勤務時間の改善を図れ

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20150315-OYT1T50152.html
Yomiuri Online 2015年03月16日
  
 4月に始まる子ども・子育て支援新制度で、待機児童の解消を確実に実現するため、政府と自治体は保育士の確保策を強化する必要がある。
 
 政府は、2013〜17年度の5年間で、新たに40万人分の保育の受け皿を整備し、待機児童をゼロにする目標を掲げている。それには46・3万人の保育士が必要だが、今のままでは6・9万人が不足すると見込まれる。

 新制度の実施に向け、多くの自治体が保育所を増設中だ。保育士の有効求人倍率は昨年12月に2倍を超えた。東京では5倍を上回る。確保がままならない状況だ。

 保育士の国家資格の取得者は、毎年約5万人に上る。

 問題は、資格を持つのに保育士にならない潜在保育士が70万人もいることだ。養成校の卒業生のうち、保育士の仕事に就くのは半数にとどまる。早期離職も多い。

 敬遠される理由として挙げられるのが、低賃金と長時間労働だ。民間保育士の月給は平均21・6万円で、全産業平均より10万円以上低い。残業や行事などでの休日出勤も多い。人材確保のため、就労条件の改善が急務である。

 保育所の運営費は、主に政府や自治体の補助金で賄われている。政府は、新制度で民間保育士の賃金を平均3%引き上げる加算制度を導入する。事業者が確実に賃金改善を実施することが重要だ。

 当初は5%アップが検討されたが、財政難で圧縮された。一層の引き上げが課題だ。人手を増やし、仕事の負担軽減も図りたい。

 厚生労働省は、これまでも保育士の離職防止や潜在保育士の復職支援を自治体に促してきたが、十分な成果は見られない。

 1月には、新たに「保育士確保プラン」をまとめた。保育士試験を年2回実施する都道府県への補助などを打ち出した。

 中でも力を入れるべきは、潜在保育士の活用だろう。

 都道府県が設置する「保育士・保育所支援センター」の一部では、潜在保育士を対象に、けがの救急処置や保護者への対応法など実践的な研修を実施している。勤務時間などの希望を保育所側ときめ細かく調整するセンターもある。

 いずれも、保育所への就職の実績を上げているという。

 こうした事例は、ほかの自治体の参考になろう。

 安倍政権が掲げる「女性の活躍推進」には、安心して子供を預けられる体制作りが欠かせない。保育の仕事の魅力を高めるため、さらなる工夫が求められる。

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