岩城弁護士のはばかり日記より
No.239 「過労死防止学会」が設立──民間における過労死の調査・研究を推進
◆5月23日、明治大学駿河台キャンパスのリバティタワーの12階1123教室で、「過労死防止学会設立記念大会」が盛大に開かれた。
これは、昨年の過労死等防止対策推進法(過労死防止法)の成立・施行を受け、過労死の実態と防止対策についての調査研究をメインに行う民間団体として、過労死遺族や研究者、弁護士、労働安全衛生の活動家、ジャーナリストなど幅広い人々によって結成されたものである。
参加者は、70人くらいではないかということであったが、その2倍以上の160人以上が参加。会場はほとんど満席となり、100部しか用意していなかった資料を増刷することになった。
◆第1部の記念シンポジウムは、川人博弁護士(過労死弁護団全国連絡会議幹事長)と笠木映里さん(九州大学法学部準教授)の司会で始められた。
<報告>(各30分)
?寺西笑子さん(全国過労死家族の会代表)
「過労死のない社会の実現をめざす遺族の願いと防止法の課題」
?熊沢 誠さん(甲南大学名誉教授)
「過労死の根因とこれからの課題」
?加藤 敏さん(自治医科大学精神医学教室教授)
「ここ最近の日本における企業情勢と職場のメンタルヘルス」
寺西さんは、夫を過労自殺で亡くしたご自身の体験とともに、市役所の職員であった父を過労自殺で亡くした「真弘君」(有名な「僕の夢」という詩を書いた「マー君」)の作文を読み上げた。会場ではあちこちですすり泣きが聞こえた。
詳細な紹介はできないが、3人のお話はとてもインパクトがあった。そして、この全く異なる視角からの報告を議論し、融合していくことが、まさにこの過労死防止学会の課題なんだろうなと思った。
<予定討論>(各10分)
?ノース・スコットさん(大阪大学人間科学研究科教授)
?岸 玲子さん(北海道大学環境健康科学研究教育センター特任教授)
?西谷 敏さん(大阪市立大学名誉教授)
?東海林 智さん(毎日新聞記者)
これも、詳細を紹介することはできないが、過労死の「防止法」ではなく「防止対策推進法」とすることによって目的がそらされないか(ノースさん)、過労死するかどうかという狭い基準で論じるのでは不十分ではないか(西谷さん)、現在進められている裁量労働制の拡大と矛盾する(東海林さん)など、鋭い指摘がなされた。
その後、参加者から出された質問用紙に基づく質疑や、会場を交えた質疑・意見交換が行われた。連合の副事務局長の安永貴夫さんは、労働組合として責任を痛感していることと、今後の決意を述べられた。
◆第2部は、本題の設立総会。学会の設立呼びかけ人がそのまま初年度の幹事になること、代表幹事に森岡孝二さん(関西大学名誉教授)、事務局長に櫻井純理さん(立命館大学産業社会学部教授)が就任することなどが確認された。
◆終了後の懇親会も、当日の飛び入りも含めて60人以上の方が参加した。
過労死防止全国センターとは違った顔ぶれで、初めてお会いする方も多く、私にとっても貴重な場であった。
この新しい過労死防止学会が、日本の働き方を変えていくことになればいいなあ、と思う。
※写真は上から、
?設立記念大会プログラム
?司会を務めた川人博弁護士、笠木映里さん(九州大学法学部准教授)
?厚生労働省労働基準局鈴木英二郎総務課長の来賓あいさつ
?報告をする寺西笑子さん(全国過労死家族の会代表)
?同じく、熊沢誠さん(甲南大学名誉教授)
?同じく、加藤 敏さん(自治医科大学教授)
?7人が勢ぞろいしたパネルディスカッション
?会場の様子
?結成総会議事を進める森岡孝二さん(関西大学名誉教授)と色部 祐さん(いの健東京センター)
?初年度幹事に就任された呼びかけ人の皆さん
?懇親会で乾杯の挨拶をされる西谷敏さん(大阪市大名誉教授)と黒田兼一さん(明治大学教授)