就職活動:都会の学生目指すは農業「将来性ある!」

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毎日新聞 2015年08月20日 12時40分(最終更新 08月20日 12時49分)

主力商品の九条ねぎの管理や販売を担当している山本智之さん(左)と妹尾侑樹さん=京都市伏見区の「こと京都」向島工場で、佐々木洋撮影
    
 大学生らの就職活動がピークを迎える中、農家出身でない学生が業績好調な農業法人に就職するケースが目立っている。東京都内では農業法人の合同説明会が開かれ、有名大学の学生も多数参加している。都会の学生が農業を目指す理由は−−。

 東京都出身で、法政大法学部を卒業した妹尾(せのお)侑樹さん(25)は2年前、農業法人の合同説明会を通して京都市の「こと京都」(従業員約120人)に入社した。

 こと京都は2002年設立。ブランド野菜として人気が高い京野菜の九条ねぎに特化し、生産から加工、販売まで手がける。麺類の薬味に使うカットねぎの販売で急成長し、設立当初1億円弱だった売上高は現在、グループ全体で10億円を超える。13年以降、3人の大卒者を採用している。

 妹尾さんは「国産農産物への関心が高まっており、農業は将来性のあるビジネスだと感じた。最初は親が反対したが、法学部で学んだ知識を生かして大きな仕事がしたい」と話す。

 昨年同社に入社した山本智之さん(25)は兵庫県出身で立命館大理工学部卒。東日本大震災後に宮城県気仙沼市などでボランティアとして農地の復旧作業を手伝った経験から農業に興味を持ったという。山本さんは「人と人をつなげる仕事がしたかった。産地の連携を深めて農家の経営強化につなげようという会社の理念に共感した」と語る。

 野菜数十種類の生産、加工、販売を手がける「和郷(わごう)」(千葉県香取市、年商約57億円)は14年度に大卒者の定期採用を始め、東大や早稲田大などの男女4人を採用した。人事担当者は「みんなバイタリティーがある。新しい流通の仕組みを考案するなど、会社を背負う人材になってほしい」と期待する。

 2年前から農業法人の経営者らによる合同会社説明会を開催しているのは、都内の農業コンサルティング会社「コネクト・アグリフード・ラインズ」。これまでに10社前後を集めて6回開催し、その都度、東大や慶応大、早稲田大など有名大学の学生を含め約60〜100人が集まるという。昨春は10人、今春は15人が農業法人に就職した。

 コネクト取締役の前田慶明さんは「学生はIT(情報技術)を活用した農業経営や大規模化などを進める先進的な農業法人に将来性を感じている。企業側も、知識や発想力がある若手を採用し、幹部候補として育てようと考えている」と話している。【佐々木洋】

 ◇農業法人

 株式会社や組合などの形態で農業を営む法人の総称。農家に比べ経営管理が徹底でき、従業員の雇用による規模拡大や資金調達力の向上などの利点があるとされる。農林水産省によると、2014年2月現在で全国に約1万5300の農業法人が設立されている。

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 農林水産省の統計によると、2013年に農業法人で雇用された大学生などの新規学卒就農者は1370人で、08年に比べて70人増えた。妹尾さんのように実家が農家でない人は1110人で8割を占める。農水省は、13年から首都圏の大学に職員が出向いて農業法人の紹介をしたり、実際に就職したOBらによる講演などのイベントを開催したりして支援している。

 農業を巡っては、09年に企業の農地借り入れを原則自由化する改正農地法が施行され、流通大手「イオン」やゼネコンの「大林組」など大手企業の参入も進んでいる。農水省就農・女性課の担当者は「やり方次第で農業はもうかり、人に喜んでもらえる仕事だとの認識が学生にも広まってきた。今後もこの動きを加速させたい」と話している。【佐々木洋】

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