「貧困層が入隊」進む? 若者や母親に不安感

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共同通信 2015年9月19日
 
 安全保障法制によって、将来的に貧困層の若者が自衛隊に入隊せざるを得ない状況が生まれるのではないか。低所得者層を中心に勧誘する米軍の現状を念頭に、そうした懸念が、若い世代や幼い子どもを抱える母親たちの間で生まれている。

  人口減少や非正規雇用の増加、経済的格差の拡大を背景に「自衛隊も米軍のように奨学金制度などを売り物にして勧誘をするようになるのでは」と心配する。

  米国はベトナム戦争から撤退を始めた1973年に徴兵制を廃止した。その後、軍は奨学金制度の拡充や、除隊後の就職仲介といった対応を進め、主に低所得者層をターゲットに勧誘。除隊後を見据え、チャンスを求めて入隊した若者がイラク戦争などに送られた。こうした状況は「経済的徴兵制」とも呼ばれる。本来の徴兵制ではないものの、経済的な事情から入隊に追い込まれるという意味だ。

  東洋大の大学院生の男性(34)=東京都新宿区=は「日本も格差が広がり、貧困の連鎖は深刻。米国のような経済的支援があれば、やむを得ず自衛隊を選ぶ人が増えるのでは」と話す。「安保法案に反対しなければ、社会的弱者が権力者のために動かされる世の中になる」と国会前の集会に参加してきた。

  「ママたちの間で経済的徴兵制はよく話題になる」と語るのは、5歳の子どもを育てる 池田亮子 (いけだ・りょうこ) さん(36)=西東京市。「誰の子どもも殺させない」を合言葉に活動する「安保関連法案に反対するママの会」メンバーだ。人口減少が進めば隊員が不足し、自衛隊も低所得者層への勧誘を強めるかもしれない―。「望まないのに危険な任務に就かされ、殺し殺されるということにもなりかねない」と危ぶむ。

  労働問題に詳しい 熊沢誠 (くまざわ・まこと) 甲南大名誉教授は「他国と比べ日本はまだ失業率がそれほど高くないため、すぐに米国のような状況になるとは考えにくい」と分析。「だが、アベノミクスに格差を改善する要素は乏しく、若者の不安は理解できる。職業訓練が期待できないブラック企業より、技能などが身につく自衛隊に引き寄せられる状況が、じわじわと進む可能性は十分にある」と話した。  (共同通信)

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