年収1075万円以上対象  新たな労働制度  厚労省、健康確保措置も

2015年01月08日 共同通信

 一定の要件を満たした労働者を残業代支払いといった労働時間規制の適用除外とする新しい制度について、厚生労働省が「年収1075万円以上」の人を対象とすることで調整していることが8日、分かった。同時に対象者への健康確保措置も盛り込む。厚労省は16日の労働政策審議会分科会で、労働基準法改正案の骨子を示す。

 新制度は政府が成長戦略に明記。今月に始まる通常国会で労働基準法の改正を目指し分科会で議論が続いていた。分科会は今月中に報告書をまとめる方針だが、「残業代ゼロ」「過労死を促進する」と批判する労働側委員の反発が予想される。

 政府は対象者を「年収1千万円以上、職務が明確で、高度な職業能力を持つ人」とし てきた。厚労省は年収要件で政府方針を上回る額に設定、省令で定める方向だ。具体的な職種は調整中だが、厚労省は昨年11月、分科会に対象となり得る職種として「有価証券の売買業務」「製薬会社の営業職」などを例示した。

 新制度は企業に残業代の算定基準である労働時間管理の義務がなくなる。厚労省は対象者の健康に配慮するため、従来の労働時間とは別に在社時間などを企業に把握することを求めた上で、(1)年間104日の休日取得の義務付け(2)在社時間の上限規制 (3)仕事を終え次に働くまで一定の休息時間を設ける「勤務間インターバル規制」―のいずれかを導入企業に選択させる考え。医師による面接指導も義務化する。

 また、対象者本人の同意を要件とし、残業代がなくなることで対象者の賃金が減らないよう企業に配慮させる。

 新制度は「ホワイトカラー・エグゼンプション」とも呼ばれ、第1次安倍政権でも導 入を目指したが、労働界や過労死遺族の強い反発を受け断念した経緯がある。

 骨子案には新制度のほか、従業員が年間数日間の年次有給休暇を取得するよう企業に義務付けることや、中小企業の労働者について時間外労働の割増賃金を引き上げるといった、働き過ぎ防止策も盛り込む。

労働時間規制

 労働時間規制 労働基準法は労働者の健康確保のため、労働時間の上限を1日8時間、週40時間と定める。労使が合意すれば時間外労働は可能だが、企業には残業代などの支払い義務がある。政府が導入を目指す新たな労働時間制度は、年収などの一定要件を満たす労働者をこれらの規制から除外。働く時間は自己裁量となり、賃金は成果で決まるため、企業に残業代の支払いや労働時間管理の義務がなくなる。

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