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毎日新聞 2015年11月05日
経済界が来年の採用選考活動の解禁時期を「6月」に変える方向で検討していることに、大学3年生から反発や戸惑いの声が上がっている。今年「就活の短期化」を掲げて従来より4カ月遅い「8月」としたものの、企業の足並みがそろわず逆に長期化したとの批判があるが、就活の準備を始めている学生からは「コロコロ変えないで」「変更するには遅すぎる」と困惑の声が上がっている。
「私たちの人生がかかっているのに、『社会実験』に振り回されている」。経団連が6月案を軸に調整に入ったとの報道に、私立大法学部3年の女子学生は、同級生とこう話したという。「6月解禁にしても、4年生の前半は学業より就活を優先させざるを得ないのは同じ。企業の都合優先で学生は置き去りと感じる」と言う。
今年の「8月」は確かに企業、学生双方から不評だった。
採用支援会社「ディスコ」の今秋の企業へのアンケート調査(主要1355社が回答)で、変更が「有利になった」は3.3%、「不利になった」が64.6%に上った。情報サービス会社「マイナビ」の学生対象の調査では、8割が「マイナスの影響が大きかった」と答えた。主な理由は「暑い時期に活動しなければならなかった」(60.5%)▽「学業の妨げになった」(55.7%)▽「水面下で動く企業があり、状況が把握しづらかった」(55.6%)。
新たに検討され始めた「6月」はどうか。
マスコミに内定した国立大4年の男子は、夏まで就職活動にかかりきりだったため、今は卒業論文の執筆に追われている。「6月解禁ならもっと早い時期から卒業論文に取り組んだり、旅行にも行けたかもしれない」。メーカーに内定した私立大4年の男子も「短期間で終わるのはよい」と肯定的だ。
ただ、来年の就活の当事者である3年生の意見は異なるようだ。「4年生の体験談を基に描いていたスケジュールがあっさり崩れた」(私立大3年女子)。「いきなり変えられ、いきなり戻される印象。長期的な視点がない」(別の私立大3年女子)。国立大3年の男子学生は「日程が読めないことで焦りばかりが募る」と話す。
大学・短大などでつくる就職問題懇談会も4日、2年連続の変更で混乱に拍車がかかることを懸念して「2016年度は現行通りにし、変更するなら翌々年からにすべきだ」と経団連などに要請した。学生の教育実習や留学先から帰国する時期にも影響するという。
「6月」に変更した場合、大学ジャーナリストの石渡嶺司さんは「1日インターンシップという名目で、3年生の12月から2月にかけて事実上の説明会をする企業が増える」と予測。マイナビHRリサーチ部の石田力課長は「3月解禁の会社説明会から6月の採用試験までの期間が今までにない短期間になる。それまでにインターンシップに参加し、業界や職種の理解を深めるとよい」と学生にアドバイスする。【高木香奈】